山岳古道⑤生活の道だった熊野古道(馬越峠と八鬼山越)2021年02月18日

東紀州の八鬼山と高峰山
http://koyaban.asablo.jp/blog/2009/01/25/4080883

林道の交差地点から急坂になり、いよいよ山に登る感じがしてきた。石畳の道は相変わらずであるが階段状になり、一歩が歩きやすく感じるのは登山のための道と違って昔の生活道路であるからだ。三角点のような「曲点」の標石が埋まるカーブも丸くて柔らかい曲がり方ができる。恐らくは紀州藩の役人の言いつけで村総出で道普請に借り出されたであろう。雨の多い地域だけに流出しないように重い石を敷き詰めたのである。その苦難たるや後の世の人間には想像もできない。
 降りてきた人は2名か3名、追い抜いていった人も1名程度で閑散としている。それはこの八鬼山越えが熊野古道で一番の難所だったからだ。坦々と単調になりがちな古道歩きである。喘いで登りつめた峠で昼食をとるために一休みした。峠の向うに湾が見下ろせた。古い時代の山旅人も同じ感懐を持ったであろう。峠は風の通り道なので風に乗って再び小雪が舞って来た。
 八鬼山へは峠を右へ更に登った。やがて荒神堂に着いた。古い建物が二棟道を挟んで建つ。そこをやり過ごすとまた広い石畳の道となって登る。平坦な稜線を歩くと三叉路に着いた。ここが八鬼山越えの頂点だった。ここも非常に寒い。小広い平地に海を見下ろす東屋が建つ。熊野灘を見下ろせた。  
 寒いせいか先を急ぎたい気分もあって山頂への道も不明なのでそのまま道を辿った。又戻って桜の森へ340mの案内にしたがって行った。平坦な道の左奥が八鬼山の山頂らしいが三角点もないのでパスして下る。だらだら歩いていくと左に椿園がある。二股に分かれるので左を行くと熊野灘に面して東屋の建つ桜の森園地であった。芝生のややラウンドした園地は広々してどこでも腰を下ろせる。東屋に立つと熊野灘が180度に展開した。素晴らしい景色に感嘆した。
 桜の森を見て周ると江戸道と称する案内があった。先ほどの左への道は江戸道だったのだ。改めてガイドブックを見ると三叉路の先は明治道であり、ここだけは道の付け替えが行われたようだ。江戸道を下ると急坂に次ぐ急坂で険しいことが分かった。明治道はそれを改良したのだろう。概ね照葉樹林の中の道はいかにも紀州の山に居る感じがする。
 十五郎茶屋跡があり、海が見下ろせた。しかし、まだ標高は400mもある。急坂を下りに下った。やや広い明治道と合流した。江戸道は登山道に近い付け方であった。どんどん下ると登山口に着いた。子犬が我々を迎えるように吠えた。猟師が一人留守番をしていた。世間話をして別れた。
 殆ど平坦になった古道はやがて人家の間を抜けて車道に合流した。ここにも世界遺産に反対する地権者の看板が立っていた。キチンとした文章で意味のよく通る意思表示であると思った。車道をJR三木里駅まで歩く。15時30分着。ようやく思いがけなく長かった古道歩きも終った。

東紀州・熊野古道から天狗倉山を歩く
http://koyaban.asablo.jp/blog/2014/06/03/7334427
前方を見るとほぼ直線に石畳の道が伸びていく。デザイン的にも洗練された美しい道である。せせらぎを2箇所渡る。タオルを濡らして涼をとる。更に行くと右前方が皆伐された斜面が見えた。そして思いがけず林道が横切っている。眺めはいいのだが古道の雰囲気は台無しである。すぐ先が馬越峠であった。茶屋のあとは植林してある。一角から尾鷲市街を見下ろせた。
 一休みの後、天狗倉山に向かった。やや急な山道をよじ登ってゆくと道は二股に分かれている。今回は右にとった。山頂の大きな岩を巻くとすぐに鉄梯子が見えた。岩に登って休止。風も無くかなり暑い。降りてもう一つの岩に移ると風に当って涼しかった。尾鷲湾がよく見える。遠望はガスがあってすっきりしない。
 下山する。高齢の地元ハイカーと行きかう。何度登っても楽にはならんと言った。そりゃそうだ。峠に戻り、尾鷲市側に下った。こちら側は傾斜がきつい。ドンドン下ってゆく。多くの散歩の人と行きかう。こんな山のふもとに住む市民は幸せである。
 尾鷲に来るたびに訪れる喫茶「山帰来」に寄った。オーナーの川端守氏は登山のために不在だったが奥様が、開店10時のところ、30分早めに開けていただいた。冷たいコーヒーを注文。2年から3年に1回は来ているので見覚えはあるようだ。山の話題でもちきりになった。特に熊野古道に関して『熊野古道 古辺路紀行』を著されたこと、熊野古道センター長に就任されたこと、世界遺産登録10周年の今年はイベントも多くご多忙の様子だった。

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