79歳の遭難2020年09月18日

 上越市の南葉山という山で79歳のハイカーが行方不明になり、捜索の結果翌日発見された。低体温症の恐れもあるという。そりゃそうだろう。1000mに満たない山でも今はもう秋であり、日本海側の山は気温も低い。ご無事で良かった。もう1つは北アの燕岳から東沢岳に向かった登山者も道迷いで捜索中という。こんな渋いコースを選択するから多分初心者ではない。しかも単独行であるから年季をいれたベテランだと思う。しかし、今年に限ってはベテランは通じない。長期のステイホームで何もかも鈍り、筋力も低下しているだろうから。通常のペースを取り戻すには粛々と山歩きを慎重に重ねてゆくことしかなさそうだ。

身に入むや古希を過ぎての登山の死 拙作2020年09月17日

 八ヶ岳の赤岳で71歳の単独のクライマーが転落死した。しかも女性だったことに驚く。山岳会関係者かと思い検索するとFBがヒットした。その世界ではよく知られた人だった。
 ステイホームで足、腰、腕の筋力が低下し、微妙なバランスを要求されるクライミングでは力不足なのだろう。過去の豊富な成功体験は実践では無駄になるのだ。
 それにしても71歳で単独とは恐れ入る。仲間がおれば制されることがあったかも知れない。中途で引き上げの選択もあっただろう。いい加減さが命拾いすることもある。
 お悔やみ申し上げます。

登山における基本のキ2020年09月01日

朝日新聞朝刊18面(2020.09.01)
 9月1日付けの朝日新聞朝刊の18面です。「低山登山 意外な落とし穴」のテーマで掲載。先週辺りから電話取材を受けていました。村井記者が実際に登山して見聞してまとめられた。
 私の所属山岳会のブログでも春先に今年は遭難が増えるぞ、と意識的に遭難事故をアップ。5月前後で23件、6/19から8/31までではなんと70件を越えました。しかもほとんどは低山でした。
 5月前後は道迷い、及びそれに起因する滑落が多数でした。夏になってからは、8月だけでも55件ほどあり、年齢も遭難原因も多岐に亘りました。
その中で気がついたのは登山届の未届、或いは家族にも知らせていない、知らせても、「山に行く」とだけ、だったりした事例があった。初動の救助に戸惑うわけです。慣れからくる油断である。
 長野県で遭難対策にあたる人は、計画書段階で出さない登山者は「登山に行く前に遭難している」と大言壮語したものでしたが、現実にそんな人が多かった。自分もそうならないようにしたい。
 富山県、岐阜県、長野県の救助側の人の話も聞いてきたが遭難する登山者は後を絶たない現状である。

「認知症パンデミック」が起こっている!ってさ。2020年08月26日

デイリー新潮
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/08260557/?all=1

 週刊新潮8/27号のP27からP31に「認知症パンデミック」が起こっている!という特集記事が載っていて興味深く読んだ。
 愛知県の大村知事も「過剰な呼びかけは「自粛警察」の生みの親」として写真付で紹介された。要するにコロナウイルスの脅威を必要以上に煽りすぎというのである。
 デイリー新潮から重要な部分を転載すると「「コロナ禍で高齢者の足腰はだいぶ弱っていると感じています。屋内で転倒、骨折して病院に運ばれる人は増えているし、家に閉じこもっているとご飯を食べなくなり、メンタルも参ってしまう。みなさん感染したら重症化すると思って、外出しないように心がけているからです。だからなおさら、息子や娘が親の様子を見て“ここまですると逆に健康によくないよ”“散歩したほうがいい”などと助言することが大切になります。その点でも帰省には意味があります」
 知事たちが「帰省を控えろ」「移動するな」と強調する背景には、重症化リスクが高い高齢者を守るという建前がある。ところが、こうした圧力のせいで高齢者がむしろ危険にさらされている、という現実があるのだ。内科、循環器科医で、大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏も言う。
「ここ2週間ほどで数カ月ぶりに会った3、4人の患者さんが、筋力や認知機能の低下が見られる“フレイル”という状態になっていました。以前は自転車で通院していた方が歩けなくなって妻が付き添ってタクシーで来たり、はきはきしていた方が認知症のように喋れなくなったり、2階にある外来まで階段を上がれなくなったりしていたのです。ふつう人は少しずつ年をとるのに、短期間で一気に衰えてしまったのです。私が定期的に診察している高齢者は100人もいません。そのなかに3、4人というのはかなりの確率。日本全体では何十万人もの人が弱ってしまっているのではないでしょうか」
 単純計算すれば、高齢者の4%程度に異変が起きていることになる。」
「「危ないのは75歳以上の、いままで活発に出かけていた男性です。女性は家にいても家事をし、買い物に行き、出先や電話で喋る機会もあるようです。一方、男性は外出を控え、家でワイドショーを見て怖くなって、さらに出られなくなる、という悪循環に陥っている人が多い。精力的に出かけていた人が急に閉じこもると、身体的、精神的に影響は大きい。散歩すらしないと一気に体力が衰え、認知症リスクも高くなる。認知症予防には社会的活動が不可欠で、このままでは“認知症パンデミック”と呼ぶべき状況になってしまいます」
 4%に異変が見られるなら、パンデミックはすでに起きている、と言うこともできよう。そして、だからこそ帰省が必要なのだ、と石蔵氏は説く。」

 思い当たるのは山岳遭難の前年比の急増である。上記の文の中にフレイルという言葉があったが、高齢の登山者の行方不明の激増と、発見されても滑落で遺体で発見ということも多い。怪我の増加とは無関係ではない。
 東海白樺山岳会ブログにアップしたのは6/19から8/25までの山岳遭難の一覧である。6/19以来63件発生した。8月だけでも48件になる。記事の件数だけで見ても昨年8月は40件、今年8月は8/25現在で56件にのぼる。毎年8月は遭難が多いが今年は突出して多い。63件中、60歳以上では23件、内死亡は11件あった。

http://tss1962.blog.fc2.com/blog-entry-1321.html

 筋力低下とフレイルを無自覚のまま登山して、行方不明になり、山道で転倒、転落、滑落したことと思う。5月前後の集計データでは高齢者の単独行が多いのが特徴だった。これは自粛中なので仲間を誘うことへの躊躇があったのだろう。
 緊急事態宣言で大きな影響があったのは経済だけではなく、こうした非日常の生活(帰省、登山、旅行など)にも大きな影を落としていると思う。

登山の死いつかわが身に銀河浴ぶ 平岩武一2020年08月17日

 東海白樺山岳会ブログで遭難件数を列挙し始めて、6/19から8/16までの約2ヶ月弱で49件発生した。7月末までで15件、8月だけを取り上げても34件ということになり、1日でほぼ2件発生していることになり、これは異常事態である。
 昨年の8月と比較すると名山や日本アルプスが多いが今年は北アに集中し、全国各地の低山に拡散した傾向がある。コロナ禍で有料、食事付きの山小屋が北アに限られるのでこれは予想通りといえる。
 もう一つは高齢登山者の遭難多発と死亡率の高さが群を抜いている。特に道迷いから行方不明になる事例が後を絶たない。ただでさえ、高齢になれば筋力低下は免れないのに知ってか知らずか、滑落死が多い。高齢者の滑落、転倒、転落は死につながりやすい。筋力の低下は左右前後のバランスをつかさどる重要な筋肉なので、意識的なタンパク質の摂取が必須であろう。加えてVB1,VB2,VB12などとVCも重要なものである。
 お盆休みも終わって、山岳遭難も一段落するだろう。8/21からは猛暑も一服するとの予報が出ている。どこかの静かな山域で静養したいものである。ステイホームは何もしないようでも結構体力を消耗している。在宅の熱中症患者が死亡することもある。暑いというだけでも消耗するのである。

山岳遭難多発中2020年08月09日

 6/19の越県の外出禁止措置が解除されて、一斉に海に山にレジャーを楽しんでいる。一方で山岳遭難も多発している。特に8月入り後は急増中である。
 山岳会のブログに集計すると6/23以来、8/9まで26件発生(複数)した。8月だけで12件発生している。

①発生件数   男性17件   女性9件

②死亡件数   男性6件    女性6件  合計12名

③1週間以上経過後続報なしは(生還か、報道のみがないのか不明)   男性のみ2件

④複数パーティなのに登山中別行動の遭難が2件あり、1件は死亡、1件は捜索中

⑤70歳以上は10名、内5名死亡(女性3名)あり、5月の集計データと比べて年齢層の分散化がある。10歳代2件(高校ワンゲル部は1件でカウント)、20歳代3件、30歳代1件、40歳代1件、50歳代6件、60歳代3件、年齢不明1件。

⑥行方不明は12件(男性8件、女性4件)あり。滑落は8件(男性4件、女性4件)あり。

⑦沢登りの事故でも増水中なのに入渓して流され2名死亡した。渡渉の技術の不足と判断力不足である。

道迷いは遭難の複合要因の元2020年06月12日

 最近、赤い布切れの枚数を増やした。常備は10本だったがさらに10本追加した。なぜなら4月下旬から5月一杯も道迷いによる山岳遭難が激増しているからだ。肉体的にフレイルとなっていると思うので用心に越したことはない。

道に迷って山中を彷徨う内に

1 木の根っこにつまづいて転倒、最悪は骨折

2 体力の消耗でリカバリーができなくなり滑落し、打撲又は骨折

3 道迷いに心理的にあせってとんでもない方向へ行ってしまう

4 挙句の果てに山中で死亡する例が後を絶たない

5 迷うと沢筋ならやがて人家のある里に出られると素人考えで下ると、滝に遭遇し、尾根に逃げると急な崖に遭遇し、戻る事さえ困難になる。
奥美濃の名峰・冠山の遭難碑は急な降雪に慌てて沢を下り死亡した。(1955年(昭和30年)11月6日に沢沿いのルートで福井銀行員24名が遭難し、うち2名が死亡した事故)

6 藪で見通しが悪く、RFのために木に登ったが生木ではないために折れて転落死した事例(五蛇池山)があった。

7 登る際に、足元が照葉樹林の落ち葉で滑ったために体重を支えるために何気なくつかんだ細幹の木が腐っていたために折れて、100m以上滑落死した事例(鈴鹿の釈迦ヶ岳)

8 ノーザイルで登ることは出来ても下ることは困難と知る

 以上のように道迷いは単純な事故に思えるが複合的な遭難原因につながっている。言わば風邪は万病の元というごとく、道迷いは遭難の元なのである。

鰻屋の修業に学ぶ山屋の心得2020年06月08日

 笑われるかも知れませんが、最近の高齢登山者の道迷いの多発傾向を考えているうちに鰻屋の修業を思い出した。
 ヤフーの知恵袋にあった回答が的確でした。

「鰻職人を「串打ち三年、板(割き)五年、火鉢(焼き)一生」とはよく言ったもので、
一生が修業人生となる領域であるほどに、経験と勘が客評判のカギを握っていることは間違いないです。」

・・・これはそのまま山屋に置き換えたい。鰻職人は山屋、串打ちは夏山、板(割き)は残雪期、そして冬山へとステップアップする。火鉢(焼き)はルートファインディングとするとどうか。岩登り、スキーはグレーディングでレベルアップの度合いが分かる。RFは低山から高山まで必須の能力であるが、自分がどれほどのものかは推し量れない。トレーニングが難しい。どんなベテラン登山家でも単純な原因で遭難(時には死ぬ)するのはこのせいだろう。
 焼きは一生というのは真理である。蒲焼は強火の遠火。垂れには砂糖も入るのでちょっと目を離すとすぐ焦げてしまう。山歩きでも下山中に今日は温泉に入り、後はあそこの蕎麦屋で蕎麦を食うか、などと考えながら歩くとどこか石の突起、石車に乗ったり、木の根っこの張り出しなどに当たって転倒したりする。運が良ければ怪我で済むが骨折もありうる。仲間内には2回も骨折した会員がいた。要するに遭難(特に道迷い)の原因は油断である。登山に集中することなのだ。
 道標のある名山歩きばかりだと中々スキルはアップしない。海外遠征経験者でもメンバーに名を連ねているだけというのもいる。アメションにならってヒマションと口の悪い先輩が言っていた。ある有名な女優がアメリカに行ってきたとはいうものの小便をしに行っただけという新聞記事であろう。ヒマラヤに行ってきたぞ、と自慢する御仁である。ベテランにはそういう人も多い。長年やっても遭難からは免れない。一生が注意深く山歩きを続けることなのだ。

西台山の行方不明事故は無事救出!2020年06月05日

NHニュースから
https://www3.nhk.or.jp/lnews/gifu/20200605/3080003935.html

 6月2日に岐阜県揖斐川町の山に入り行方がわからなくなっていた、愛知県春日井市の79歳の男性が5日午後、無事に警察に救助されました。

 春日井市高蔵寺の79歳の男性は、6月2日、揖斐川町の標高949メートルの西台山に登山に出かけたまま戻らず、警察や消防が捜索していました。
 その結果、5日午後2時ごろ、ヘリコプターで捜索していた警察官が、山頂から1.2キロ離れた谷で男性を見つけ、男性はまもなく救助されました。
腰や足に痛みを訴え病院に運ばれましたが、目立ったけがはなく、会話もできる状態だということです。
 警察官に対し、男性は「山に入った日に道に迷い、その翌日、5メートルぐらいの高さから滑落し動けなくなった」と話しているということです。
 警察は経験や体力に応じた無理のない計画を立て、十分な装備で登山に臨むよう注意を呼びかけています。

・・・ご無事で良かった。3ヶ月に及ぶ外出自粛の影響であろうと思う。登山に必要な何かが欠けるまま登山してしまい、下山できなくなった。何が欠けたのだろうか。今まで積み上げてきた登山の心得的なものかも知れません。何分低山ですから技術や体力がいるわけではない。登山道ははっきりしないところがある山ではあるが注意すれば迷うことはない。地形図とコンパスはあったのか。
 記事によれば山頂から1,2km離れた谷というからこの方も無駄に動き回ったことになる。左門岳でも迷ったと自覚したら山頂へ戻ることだった。西台山の登山者も同じである。
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縮尺は300mで2センチなので、
1.2km=1200m  300m=2センチ  2センチx(1200÷300)=8センチ
山頂から8センチポイントまで谷を下ったのだろう。一番悪いケースである。想像だが谷汲の飛鳥川源流に下ったのだろうか。もう少しで林道に出る辺りが約8センチくらいになる。

左門岳で遭難した夫婦の教訓2020年05月30日

 左門岳で遭難した夫婦の報道は一段落したが、今朝の報道は驚くことが多い。他山の石とするべく教訓を思いつく限り列挙してみた。

1つは道迷いで意気消沈せずに焚火で暖をとる知恵があったことである。ということはマッチとか着火剤などを持って居たのだろう。ツエルトの所持は報じられていないからたぶん合羽だけでしのいだのだろう。

2つはヤマップをまだ使いこなせていなかったがちょっとだけアクセスしたお陰でヤマップ側のサーバーにデータが残っていたのだろう。これを探し当てたSEの執念が凄い。

3つは残念なことは銚子滝としっていたかどうか。たぶん知らなかった。紙の地形図も持たずコンパスもなかったのではないか。あれば銚子滝の下流は平流なので危険もなく1~2時間ほどで車道へ出られた。旧板取村の人家へは徒歩2時間はかかるものの捜索は2日早まっただろう。

4つめは過去4日間の天気図を遡ると日本列島の南に前線があり、北からの乾いた冷たい風と南からの温かく湿った空気がぶつかり雨か曇りだったと思われる。これが夫婦の行動をして道迷いに誘ったか。
目の前にどうの天井という存在感のある山が指標になるはずが、霧で見えなかったのだろう。

5つめは登山道が藪で分かりにくければ赤布をつけることが必要だった。地形図やコンパス、スマホのGPS機能が無くてもこれがあれば完全に帰路を確保できた。もっともアナログ的なやり方だが基本ともいえる。