「岳人」12月号を読む2009年11月20日

 山スキー特集や沢登り特集のような定番的な記事は無条件で購入する。乗鞍岳、白山、栂池など目新しさのないエリアであるがいずれは参考にして行くこともある。
 他に、P51から55までのカラーグラビアで紹介された”雲ノ平山荘今昔48年間の歴史”が良かった。執筆は黒部通の志水哲也氏で申し分ないが歴史だけに記者的な書き方はやむを得ない。感動を伴わない文章は彼らしくない。
 思えば登山を始めて30数年というのに黒部に入ったのは今年が最初だった。12年前の48歳の時も干支の赤牛岳を考えていたが実現しなかった。今年こそはという強い意志で行った。折立から入って薬師沢小屋で一泊し、二泊目の水晶小屋へ行くまでに濃霧の中で冷えることもあり、雲ノ平山荘で30分ほどコーヒータイムを設けたことが最初で最後の縁になった。
 黒部源流一帯は広域で登山道は縦横にあるし、登山小屋も多いがアプローチが長い。奥深い地域であることが遠ざかっていた原因である。今年は赤牛から読売新道を下って黒部湖畔の道を歩き立山に抜けたが素晴らしい山旅であった。同行者のみなが満足を得た。
 その一ヵ月後、また黒部にやってきた。黒部川・上ノ廊下の遡行である。この2回の山行で黒部の魅力を知った。記事によると来年は新しい山荘が完成するそうだ。一泊してみたい。
 来年は第一に黒部源流の続きがある。薬師沢出合から鷲羽岳に詰め上げることだ、第二には赤木沢の遡行、他にも赤牛沢の遡行、高天原周辺の山旅、裏銀座コースもまだ歩いていない。60歳で暇を得るまでと取り置きしていたコースがいくつもある。山荘付近の野営場もいいところのようだから一回はテント泊もしよう。そんな来年の夢につながるグラビア記事であった。
 備忘録も今号で24回目であり最終回という。新しい企画に変わるのであろう。トリは横山厚夫氏。最初の著書である『登山読本』はよく読んだ。登山界の事情など何も分からない初心者のバイブルであった。山岳会を選んだり、入会したりそんな心得も書いてあったと思う。様々な恩恵を受けている本の一つである。『静かなる山』も先輩の奨めで買った記憶がある。今もこういう山の本が好きである。振り返ると傾向としては氏の後を追いかけてきたような気がする。活動エリアは違うが。
 岳人俳壇に目をやると皆川盤水選で秀逸の巻頭句の地位を得た”紅葉且つ散る紺碧の黒部峡”に目を吸い込まれた。上ノ廊下の詰めの段階で奥ノ廊下でもそんな光景はあったかに思う。但し、あれは岳樺だったが。もう安心圏にいたが一句ひねる余裕はなかった。この所黒部の名前に敏感になってしまった。