映画「アラバマ物語」鑑賞2009年01月03日

 『アラバマ物語』(1962年)。こちらは1929年以降の世界大恐慌のアメリカが舞台。しかも、アメリカの南部の農村で起きた黒人の冤罪事件を担当したグレゴリー・ペック扮するやもめの白人弁護士と二人の兄妹が核になって展開していく。黒人差別が主題に思える。
 最初には裁判でお世話になったものの弁護料が払えなくて農産物で代用する農民の姿が現れる。台詞にもG・ペックは子供から「うちは貧乏なの」と聞くが「ああ貧乏だ」と答える。「恐慌で作った物が売れない」と子供に呟き、さりげなく時代背景を悟らせる。しかしあの「農民ほどじゃないよ」と慰めても居る。
 妻を亡くした父親と子供のホームドラマ的な要素もふんだんにある。原作者のH・リーが子供の頃を回想していることもあり、台詞もどこか説教めいた感じがするのは立派な父親だったからである。
 弁護士の見事な弁護振りに無罪を確信したが黒人蔑視を超えることはできず、無念の有罪となる。黒人には参政権もなかった時代である。黒人の冤罪は晴れぬまま護送中に逃亡し、銃殺される。暗い結果で終るが最後には精神異常者ブーの活躍で濡れ衣を着せた犯人が襲った子供を守ることで救われる。犯人も自分のナイフで自滅したことにして。
 本番中か解説中かは忘れたが濡れ衣を着せた犯人は「アイルランド移民であり、ギャンブル好き云々」という台詞があった。ここにもアメリカがかつてはイギリスの植民地であり、黒人差別のみならず、アイルランド移民も差別の対象だったことを知る。イギリスの政策で実に700万人ものアイルランド人がアメリカに渡った時代があったそうだ。
 大恐慌ではケネディ元大統領の父親はインサイダー取引によって株式投資で大儲けしたらしい。そしてその手口を掌握しているからと証券取引委員会の初代委員長にもなった。ケネディ一家がリスクに敢然と立ち向かう精神はこの反逆的な移民精神からくるのだろう。
 人種の坩堝といわれるアメリカも2009年1月21日からはいよいよ黒人大統領が舵をとる。アメリカは舵取りの難しい国であるが恐慌から一刻も早く立ち直って欲しいもの。日本にとってアメリカは金の卵を産む鶏なんだから。

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