『津軽の野づら』の原作と出版の著作権2019年11月21日

 深田久弥の『津軽の野づら』は北畠八穂の著書とされる。深田には書けない内容だかららしい。しかし今年津軽半島では八穂は標準語で文章を書けないことを知った。津軽弁で語られた『津軽の野づら』を一般に分かりやすい文章で著したのは深田久弥であった。すると著作者も深田になるのだがなぜか不幸な別れ方をしたためか、著作権に争いがあるためか、再版を見ることが無い。
 こんな例は柳田國男『遠野物語』にも言える。
 ウィキによると原作は「岩手県遠野地方に伝わる逸話、伝承などを記した説話集である。遠野地方の土淵村出身の民話蒐集家であり小説家でもあった佐々木喜善より語られた、遠野地方に伝わる伝承を柳田が筆記・編纂する形で出版」とされる。聞き取りした話を文語体で著したのは柳田の手柄である。
 続けて「晩年の柳田も当時を振り返って「喜善の語りは訛りが強く、聞き取るのに苦労した」と語っている。」というように深田も聞き取りに苦労して小説化したと思われる。津軽半島の小泊で聞いた太宰治『津軽』の朗読の語り部の津軽弁は私にはさっぱり聞き取れなかった。しかし、秋田県の人は聞いて落涙した。
 当時26歳の田舎娘の八穂が津軽弁で深田に語りそれを解釈しながら標準語の小説にしたのであろう。中身は八穂であるが作品への貢献度は深田に傾くと考えるが・・・。