上海の霙るゝ波止場後にせり2010年02月16日

虚子五句集から。昭和11年2月26日、箱根丸船中と添え書きあり。
 この句集だけでは分からないが実はふと思い出して横光利一『欧洲紀行』(講談社文芸文庫)を読んで見た。冒頭の書き出しは家人への手紙という形で始まる。2/24の最後に「僕の食卓は高浜虚子さんとお嬢さん、云々」とある。横光と同行していたことが分かる。
 巻末の解説にはこう書いてある。8月に行われるベルリンオリンピックの観戦と欧州の事情を見聞する目的の旅であり、パリを根拠地に観察したこと、考察したことを新聞雑誌に送った。それらをまとめた紀行文である。
 この船旅では横光も句作に熱中したらしい。高浜虚子が主になって船中句会が開かれたようであるが横光も元々俳句が好きだったようだ。 『横光利一 文学と俳句』中田雅敏 勉誠社という本まである。三重県柘植町の町民館に句碑もあるという。
 上海という地名が入ることによって旅情溢れる俳句となっている。