浅野梨郷の「豊旗雲」とは2015年06月29日

 徳川園の歌碑の「豊旗雲」の短歌は有名であるが、余り聞きなれない語彙は万葉集の巻1の15 中大兄皇子(のちの天智天皇)の

わたつみの豊旗雲に入日さし今夜の月夜さやけくありこそ

の和歌の中にある。つまりとても古い言葉であって、登山で気象の知識もかじるが、私にはどんな雲かイメージが今一湧かない。多分、見ているはずだが、感性の問題かも知れない。ただの雲の現象として見過ごすか、詩の言葉として把握するか。梨郷は万葉集のこの語彙を脳裏に刻み、眼前に発見した際にこれが豊旗雲だ、と思わず詠まれたものだろう。

そこでぐぐってみると

https://www.bioweather.net/column/weather/contents/mame095.htm

これは富士山にかかる雲が風で正に旗のように靡いている。山旗雲というそうだ。すると豊旗雲の歌は海の上で、風のやや強い日の夕方に入り日が当りつつも流されて行く雲の現象だろう。それなら見ているような気がした。但し、歌に結実するには何度も見て、かつ万葉集の言葉に通じていないとできない。思い付きでは生まれない。
 ネットの解釈は過剰なものが多く、ついて行けない。単に海の上の旗めく雲の流れの現象とだけの理解に飽きたらず、余計な観念的な解釈を付け加える例が見受けられた。わざわざ難しくしてしまった結果、死語に近い言葉になったのではないか。
 私も天白川にかかる橋の上に立って、下流即ち、西の伊勢湾の方向を見ると大きな雲の造形に見とれることがある。建物が多くて邪魔されるが、梨郷が生きた時代はまだすっきりして欲しいままに雲の造形を楽しめたと思う。

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