平針の里山を歩く2009年12月25日

カモメの飛翔
 12/23の朝刊には平針の里山の買収交渉をしていた開発会社に許可を出した旨、報道された。買収金額25億円と評価額19億5000円の差額を寄付で集める金策をしたらしいが集まらず、買収を断念したようだ。
 12/19に歩いた鎌倉中央公園の山崎の谷戸も乱開発から里山を守る動きが出て見事な里山(谷戸)が保存された。すぐ近くには大仏、銭洗い弁天、源氏山公園など鎌倉の人気ある観光地と隣接するのである。
 名古屋でもCOP10が来年開催されるのを機に平針の里山保全の動きがでていたが前述の結果となった。しかし、鎌倉の谷戸の風景を見てきた目には名古屋では危機感が今一盛り上がらないように見える。
 23日は午後になって徒歩で歩いて見た。地形図を片手にR302から若干入った辺りから尾根を辿ると照葉樹の林の中に細道があって奥へ行くと老人の保養施設に出て一旦途切れた。この尾根の両側はびっしりと住宅が建ち、まさに鎌倉の住宅地と同じ風景に見える。直進すると問題の里山地域に行けるが一旦試験場に回ってみた。
 喫茶店の裏から再び林に入ってみた。踏み跡を辿ると孟宗竹の林になり、迷路になってしまった。一旦、踏み跡もない所を明るい方を目掛けて市街地へ出た。どこかの農園であったから柵を越えて反対に見ると私有地で立入禁止とある。当然である。
 後は市道を歩いてまた尾根の出口に戻り、反対側へ地道を下ると新しい集合住宅と左には問題の里山が雑木林の奥に広がる。時間がないので今日はそのまま帰った。
 25日は少し早く出た。天白川には白い海鳥が川面に浮かぶ。カイツブリもいて盛んに水中にもぐって捕食している。近づくと大きな羽を広げて飛び立っていく。写真を検索で調べるとカモメかセグロカモメのようだ。川を後にして植田の西の山を回り、黒石、神の倉へと歩く。平針の運転免許試験場の手前まで来た。23日に出てきた農園を確認して反対に市道を歩くが里山に入る入り口はすべて住宅に閉ざされてない。他にもフェンスが一部あるが入れない。そのまま回り込むと尾根から下った集合住宅の所に来た。そこに踏み跡があるので入ってみるとため池がある。池は3箇所を「発見」した。この水を引いて水田耕作をしていたものらしい。
 植生は竹、松、クヌギ、照葉樹の類で手入れがないので雑木は伸びっぱなしである。日陰になり、林床は落ち葉でふかふか。雑草も生えない。少し、間伐し、日を差し込めばいい林に生まれ変わるだろう。ぐるっと一周してまた市道に戻った。あとは尾根を反対に辿る。
 松は戦前戦後はその落ち葉が重要な燃料であっただろう。クヌギはしいたけの原木や薪炭林として利用されていたはず。放置すると高く伸びていずれは枯死するだろう。その跡には照葉樹がはびこり、元々の植生に天然遷移して行く。照葉樹が多くを占めるのは放置した時間が長く、移り変わる過程にあると思う。
 天白区は食い散らかしたようにあちこちに小規模な緑地が残されている。ここもその類であるが水田跡があり、ため池があるのは魅力であろう。今では遠くまで行かないと見られないからだ。水田自体は日進辺りにもあるがほ場整理されて懐かしい風景にならない。ここを手を入れながら温存すれば市民の憩いの場所になり得る。山崎の谷戸で見たように子供たちには収穫の喜びを教えられるからだ。
 残念ながら22日に開発の許可が下りて来年2月にも工事を始めるという。差額の寄付金はたった5億5000万円だった。大手企業も今は苦しいが払うはずの法人市民税も来年以降10%減税になる。財界の肝煎りで徴収されていたはずの減税分から寄付することも出来ないのだろうか。開発業者の提示する25億円には利益も含まれるが同社が利益を計上すれば一部は法人市民税で還流する。カネは天下の回りものだ。しかし、開発してしまったら里山はもう還らない。
 そんなに遠くない昔、コアラ舎を作る金がない、と知った古川為三郎氏は3億円だかをポンと名古屋市に寄付された。そんな風に財界の特に中部電力などが手を挙げてくれないかな。