中央アルプス・小黒川本谷2006年08月17日

 長い間心に抱いていた思いが実現するのは本当に嬉しい。同行してくれた仲間に感謝したい。
 小黒川本谷は将棋頭山に突き上げる谷の一つである。参考にした記録は『日本登山体系』(白水社)と『日本の渓谷97』(白山書房)である。前者が20年前、後者は10年前。
 出発後うわっと我々の前に立ちはだかったのは5年前に出来た大堰堤であった。こんなものを越えるのか、と計画がガラガラ音を立てて崩壊しそうになった。記録にはないものが出てくると谷は年年歳歳同じでないことを実感する。
 しかし近づいてみればちゃんと立派な高巻き道は作ってありほっとした。相当な山崩れがあったであろうと推定はつく。谷床はゴーロだらけ。一体どうなるやらと心配しながら遡行していった。小さい滝だが足場なく巻いて束の間、登山道が横切っている。これは長尾根ルートである。まだゴーロは続くだろうと登山道で迂回することにした。本谷に戻ったところは丁度二の沢と本谷の落合であった。
 遡行を再開していきなり手ごわい滝が現れた。本来の谷の姿になったのである。ここは右岸が攻めきれず左岸を高巻く。もう行くところ滝の連続であった。しかしそこを突破後はちょっと目には手ごわそうでもなんとか突破できた。そしてビバーク地に無事到着。焚き火に成功してやはりよかった。
 『山と渓谷』の遡行の喜びには沢登りの楽しさが語られ何度も読み返す。沢登りは滝を突破していくのが醍醐味である。そして夜の焚き火は勲章なのである。煙が谷をさまよっていく様は時を忘れるが今回でもそれはあった。濡れ物だらけだから乾かすのにいい。ご飯こそガスで炊いてしまったが本当は焚き火で炊き、干物をあぶって食べたかった。しかしそれは贅沢というものであろう。
 未知の沢が変化を伴って現れる醍醐味は沢しかない。尾根歩きもいいが原始の森を流れる沢歩きこそ登山の原点であろう。