梅雨晴れの冠山を歩く2013年06月16日

 朝7時、友人と合流して揖斐川町の冠山へと走る。冠山峠に着いたのは9時半だった。早いものである。

 古い時代を知るものには隔世の感がある。いたずらに昔を懐かしむのは年を取った証拠だろうけれど、28歳ころ、レンタカーに乗って、馬坂峠を越えて、本郷へ下った。徳山村は明けたばかりであった。下りの道から朝餉の支度の煙が昇るのが見えた。徳山村初見であった。そして冠山に登るために峠へと走った。

 本郷から最奥の村、塚の更に奥に聳えていた。冠山は奥美濃のマッターホルンと呼ばれていた。特異な山容がそういわせたのであろう。奥美濃の初の登山だった。あれから35年の歳月が経過して、目ぼしい山はみな登った。励谷は登っていたが、湖底に沈む前にと競うように赤谷、金ヶ丸谷、根洞谷なども踏破できた。前夜発沢中一泊で切り抜けた。

 冠山はだから原点の山といってもいい。

 映画「ふるさと」に描かれた山村風景の懐かしさ。『徳山村史』を読んで歴史の古さを知った。

 今は東洋一というダム湖が出現した。渇水が言われるが、ここは満水に近い喫水線を維持していた。かつては羊腸の道を走ったが、今はトンネルと橋でつないであっという間に冠山峠に行ける。

 峠の福井県側、岐阜県側とも想像以上に多数のマイカーが止まっていた。梅雨時最後のチャンスと見たか。多くのハイカーが登ってゆく。登山道は一旦ピークを踏んで結構下って登りかえす。途中のブナの原生林に霧が流れて素晴らしい。朴の花が遠くに見える。アザミの花、タニウツギ、ユキザサの花、ギンリョウソウも見える。やがて、冠平への道を分けて山頂へは最後の登りが待っている。北アルプスの岩場のような登りが続いて、薮に隠れた道を登ると山頂だった。
 しばらくすると徳山ダム湖も俯瞰、冠平も小さく見えた。山頂を辞して下り、冠平へ行くと、ニッコウキスゲの花が美しく咲いている。これからの花である。登山道に戻って、往路を引き返す。
 峠に下って、R417を走る。徳山会館に寄った。職員としばし雑談に花を咲かせた。きはだの話をした。森本次男『樹林の山旅』にでてくるキハダの村のこと。キハダならあるよ、と教えてくれた。何と試食もできて、苦味を味わうことができる。世界に土産物多々あれど、苦味で売るのはこれだけであろう。一袋300円。ウツに悩む友人に買った。以前、よくキハダのことを書いていた。山でキハダを見つけると嬉しがった記憶がある。
 藤橋村の道の駅で入浴。駐車場には一杯の車が溢れていた。その帰りにはアユ料理をと、道草にも熱心だった。揖斐川沿いにはなく、根尾川沿いにでてヤナの店に入って賞味できた。
 
 梅雨時というのに崩れそうにない良い天気で終わった。