春山遭難Ⅱ2006年04月13日

 北アルプスで起きた雪崩事故の穴毛谷の場合はまだ遺体が見つからないようである。ヘルメットは見つかった、という報道であるが現場には二次災害を恐れて近づけない。残念だが生存の見込みはない。冬から春の谷は雪崩の巣になり易い。絶対に入ってはならない。
 かつて栂池から蓮華温泉へのスキーツアーは一度日帰りで温泉をパスして木地山方面に抜けたことはある。会社を定年後自由な時間を得たらまず行きたいのは3泊4日で蓮華温泉をベースにして周辺の山スキーを楽しむことである。それが今般の事故で容易ならざることを知らされた。大雪または降雪中に山に向ってはならない原則、というより山の掟は守らないといけない。危険なのは分かっている。が現地にいれば予定通り行ってしまう登山者の気持ちもよく分かる。
 なぜこんなことがこんなにも多く発生するのか。
 今年1月に山スキーの板を買い換えた際に「よく売れていますか」と店員さんに聞いたらば「ええよく売れています。ただ、山やさんよりはスキーヤーさんが多いですね」という返事であった。一般向けのスキー雑誌を何冊かは読むがパウダースキー特集が目立った。パウダーの専門誌まで創刊されている。遭難多発の背景には脱ゲレンデ派の入山が活発になったこともあるだろう。どうりで山スキー専用靴でもゲレンデ用に近いものが売れているはずである。3月に専用靴のゴム底が剥がれ10年を経過したこともあり靴も買い換えた。かなり密着した感覚である。締め具は相変わらず登山靴でも履けるジルブレッタにしたが主流は靴と一体化したディアミールが定番化したようだ。
 私は自分の登り方をスキー登山である、ということを確認した。山に登る道具としてワカンと共に登山の道具として利用するのである。したがって原則は尾根であり藪の密林でも滑る。滑降オンリーの山スキーヤーは広々したゲレンデにないパウダーを求めるから谷が多くなり、雪崩のリスクを常に伴う。同じ山スキーでも大いに違う。
 雪崩ビーコンの携帯が常識化した背景にはこのこともあろう。だが穴毛谷のパーティーは全員が埋まったから誰も救助できない。それにかのスキー雑誌には雪崩事故に遭遇した人の80%はビーコンの講習会の受講者という統計も掲載されている。ビーコンの利用方法よりも雪崩事故を避ける「読み」を伝授して欲しいものである。その上でビーコンが役立つこともある、と。ビーコンは雪崩事故を避ける通行手形ではない、ということを。