山岳会ブログに異変2020年08月12日

  東海白樺山岳会ブログ
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 以上は山岳会や山岳遭難、その他の情報をアップしてきたブログである。最近は山岳遭難が多発しているので注意喚起の目的で集計を取り始めた。第一段階は山岳四団体から外出禁止の流れから登山自粛が始まった4月下旬から解除された6月上旬までと、越県での登山も解除された6月下旬以降の2回に分けて特集する形にした。

 第一回の集計からは「70歳以上の登山者はフレイルが原因の遭難に気をつけよう」と呼びかけた。
http://tss1962.blog.fc2.com/blog-entry-1234.html

 第二回目はまだ集計中であるがあっという間に40件を超えた。7月末まで15件、8月以降は現在37件になった。合計42件になった。凄い増え方である。2回目のデータからはまだ「これだ」という特色までは見えてこないがテーマは
「増え始めた山岳遭難~データをして語らしめる
http://tss1962.blog.fc2.com/blog-entry-1321.html

 8/9の段階で一応まとめてみたのは以下に書いた。
①発生件数   男性17件   女性9件
②死亡件数   男性6件    女性6件  合計12名
③1週間以上経過後続報なしは(生還か、報道のみがないのか不明)   男性のみ2件
・・・過去鈴鹿の釈迦が岳でも朝明渓谷の奥にクルマが放置されていたため、騒がれて名古屋市中村区の60歳代男性の遭難と判明しました。捜索されたが不明。3年後、滋賀県側の滝つぼで白骨死体で発見。家族、友人のきずなが薄れると捜索はほぼ警察、消防のみ1週間程度で終わります。遭難すると何とか見つけて欲しいという家族の悲痛な叫びがボランティアを呼び執念で発見につながったことがありました。家族がいるかどうかではなく、社会的に孤立を招かない生き方が大切と考えます。
④複数パーティなのに登山中別行動の遭難が2件あり、1件は死亡、1件は捜索中
・・・登山中はパーティを割るな、というのは登山者の掟です。後続が遅れていても分岐では待機し合流します。パーティから分かれて自分は下山はこっちへ行くという別行動は事故の元です。
⑤70歳以上は10名、内5名死亡(女性3名)あり、5月の集計データと比べて年齢層の分散化がある。10歳代2件(高校ワンゲル部は1件でカウント)、20歳代3件、30歳代1件、40歳代1件、50歳代6件、60歳代3件、年齢不明1件。
・・・相変わらず70歳代が多いのはステイホームで体力と筋力が減退したことと思います。目標どおりではなく、行けるところで撤退もあるように柔軟に実施したい。
⑥行方不明は12件(男性8件、女性4件)あり。滑落は8件(男性4件、女性4件)あり。
・・・70歳以上になって、話し相手がないと認知症が進むことが知られています。比婆山の行方不明事故を見ても男性の不可解な行動が見られます。家族や主催者も騒がないのだろうか。警察はそこまで分析する訳ではないので他山の石として学ぶことになる。
⑦沢登りの事故でも増水中なのに入渓して流され2名死亡した。渡渉の技術の不足と判断力不足である。
・・・沢登りは総合力が試されます。RF,登攀技術、確保技術、ビバーク、渡渉技術など。かつてのJAC広島支部の3名の溺死事故は増水した川での渡渉の失敗でした。登山の経験年数が長くても、若くても技術体力があっても判断を間違えば事故になります。
 しかし、8/9以後も続々増え続けているので数字は暫定的ということになる。

 今日は某新聞社から取材を受けた。以上に整理したことを縷々述べておいた。 
 東海白樺山岳会ブログの1日のアクセスカウントが500件を越えた。かつてないことである。コロナ禍の中の遭難に対して読者の関心が非常に高まっていると思う。山岳遭難の多発が異変なのである。ではどうすれば良いのか。コロナウイルスの感染を抑制しなければ収束はしない。そんな環境下での登山の楽しみ方も考えて取り組む必要はある。とはいえ、記者に話したことは登山の基本であった。

1 登山届けを出す。登山計画書を作る段階で山の概念が頭に入る。
2 コロナ禍以前は何でもなくこなしていた山ではあるが、3ヶ月ものホームステイの結果失われたものは何か。体力、特に筋力、関節の柔軟性、登山技術の基本、装備、同行者とのコミュニケーションなど多々ある。
3 低山ほど枝道が多く、道迷いになりやすい。道迷いを防止するにはコンパスと地形図による現在位置のチエックが欠かせない。
 ガイドブックで紹介された低山でも登山者から忘れられた山は藪が刈り払われても5年ほどで藪の繁茂する登山道になり、下山で迷い易い。登る際はすでに付けた赤布が目につく範囲で次ぎの赤布を付けて歩き、下る時はそれを外しながら歩く。
4 スマホのヤマップアプリが人気を集めている。最近ではココヘリを組み合わせて利用すると、万一の事故でもヘリコプターの救助捜索のサービスまで登場している。ただし有料であり、スマホのGPS機能は常時現在位置を探すため電波の消耗が早いといわれる。従って利用するには予備バッテリーとスマホをつなぐケーブルも必須である。
 登山口がインターネットにつながらない場所でスタートしようとしても利用できないのでつながる場所で、アプリを一旦起動し、地形図をダウンロードするなどの準備だけしておき、登山口で現在位置を示すマークを押すとスタートできる。
5 低山の道迷いでは、ビバークの心得もしておきたい。マッチ、ライターをポリ袋で防水処置をしてザックに収納。
 タネ火になるのは古新聞紙、ローソクを折れないようにトイレットペーパーの芯に入れてポリ袋で防水、牛乳パック(高級パルプなので)の空き箱、宴会で使う着火剤(ホームセンターや百金で売っている)、低山帯なら山野に落ちている杉、桧、などの枯れ木、流木、落ち葉、亜高山帯なら白樺、岳樺の樹皮がよく燃える。
6 一般の行動食のほか、非常食も必須である。
7 お盆を過ぎて秋になると、英語でオータムともいうが、fallともいうように日没が一日一日早くなるので、ヘッドランプも必須である。
7 雨が降らない予報であっても、雨がっぱは必須であり、いざビバークでは一番上に着て、防風着にも活用できる。ツエルトがあればいうことはない。
8 その他、服装、登山靴等々考えておくことは多い。
9 リーダーには登山技術や知識があるだけでなく、経験豊富で的確な判断力のある人を選びたい。登山の安全はリーダーの資質にかかっている。かといって、リーダーだけにおんぶしてもいけない。
 会社経営なら、社長が判断を誤って倒産させると生活が苦しくなるが命まではとられない。登山ではたとえ低山であっても落命に至ることもある非情なスポーツであると知っておきたい。