上坂冬子さん死去2009年04月17日

 評論活動で活躍された上坂冬子さん(愛知県豊田市出身)が死去された。享年80歳。ネットの新聞で知った。熱心な読者ではなかったが時々雑誌では目を通していた程度だった。
 若い頃、『何とかしなくちゃ』を読んだことがある。単行本では唯一購入した記憶がある。トヨタ自動車のOL(当時はビジネスガールを略してBGと呼んでいたが後に売春婦の意味もあるのでOLに変わる)としてスタートした顛末記だったと思う。
 生涯独身だったからおひとり様のはしりのような人である。職場でお茶汲みに明け暮れていた高卒のOLが発奮して退職し、独立した評論家になっていったのだから凄いと感心をしたものである。
 WIKで著作歴を見て改めて精力的な評論活動を概観した。特に『生体解剖』(1979)から内容がシリアスなものに変わっていく。それ以前は若い女性の生き方的な本が多く見られる。
 最初の『職場の群像』が1959年、『何とかしなくちゃ』が1979年だから10年単位で脱皮していった。本格的な評論の取り組みにはおよそ20年の歳月を要したことになる。10年でテーマを見つけ、資料を収集し、書いて発表。一人前になるには何事も20年を要するのだと思う。

広瀬隆『資本主義崩壊の首謀者たち』を読む2009年04月19日

 サブプライム・ローンに端を発した世界経済の混乱は2009年秋のリーマン・ブラザーズの破綻で最悪の結果を見た。著者はこの顛末を中心人物=首謀者に焦点をあてて詳細に解説している。一連の事件を金融腐敗と喝破している。たしかにルービンが最大手のゴールドマン・サックス証券の会長から財務長官に着任するなんて日本では考えにくい。野村證券の社長が財務大臣になったらどうなるか。そんな人事例がアメリカでは自然に行われていることにこれまでは違和感を持つこともなかった。猫に焼き魚の番をさせるようなものでアメリカ政治の不可思議なところである。
 これまでにも今起きている現象を理解するために「エコノミスト」「ダイヤモンド」「東洋経済」その他の雑誌、新書などを都度読んできて分った積りでいたが後講釈のままなのでこれからという視点は得られなかった。本書では第三章の日本がとるべき新しい進路で展開されている。しかしこの実践は難題だ。狡猾なアメリカに騙される可能性がある。先の北朝鮮の飛翔体発射実験の問題もアメリカが日本に軍備させる口実を作りやすくするために仕掛けた、という見方がある。その軍備のカネはアメリカに流れる。日本の安全を揺さぶって金儲けを企んでいるのだ。この点でアメリカは決して同盟国ではない。今こそ有能な政治家の出現が待望される。
 例えば吉田茂である。名言を検索すると「「今に立ち直る。必ず日本は立ち直る。」「君達は自衛隊在職中、決して国民から感謝されたり、歓迎されることなく自衛隊を終わるかもしれない。 きっと非難とか誹謗ばかりの一生かもしれない。御苦労だと思う。 しかし、自衛隊が国民から歓迎されちやほやされる事態とは外国から攻撃されて国家存亡の時とか、災害派遣の時とか 国民が困窮し国家が混乱に直面している時だけなのだ。 言葉を換えれば、君達が日陰者である時のほうが国民や日本は幸せなのだ。 どうか、耐えてもらいたい」 (吉田茂、昭和32年2月、防衛大学第1回卒業式にて)」「「戦争に負けて、外交に勝った歴史はある」「忍耐がどんな難問にも解決策になる 」など含蓄のある言葉が出てきた。
 アメリカの大量消費に依存してきた日本経済は発展した。確かに豊かになった。これからはその富がそっくりアメリカに奪われるような気がする。しかし、もう日本政府にも余力はない。国債は上限まで来たし、米国債は目一杯買い込んでいる。地方経済からも疲弊している。農協の元締めの農林中金はアメリカの住宅金融債を大量に買い込んでいる。再び扱けたら一触即発である。次は日本の郵便貯金が狙われる、という。麻生太郎総理大臣はしっかりして欲しい。
 相場を荒らしまわるヘッジファンドは消滅でなく、鳴りを潜めているだけ、と本書にある。3/9の暴落から今またバブルが形成されつつある。わずか一ヶ月で急上昇してきた。注目の大手銀行も黒字というが2001年3月に導入された時価会計を緩和したからという。
 ロイターからコピーすると。
「ゴールドマン・サックスやウェルズ・ファーゴなどの2009年第1・四半期決算が好調だ。米株式市場は、それぞれの決算発表直後に好感し、相場全体もいったん上昇した。

だが、2つの金融機関は明言していないが、この決算好調の背景に「時価会計基準の緩和」の効果が働いているのではないか、との見方が金融市場でささやかれている。

米財務会計基準審議会(FASB)は今月2日、時価会計基準の緩和を決めたが、適用時期に関しては、第1・四半期決算からでも可能とされた。

米国の金融市場動向に詳しいある国内市場関係者は、時価会計基準が緩和されたことで「米金融機関の経営の実態が、市場参加者の目から隠されることになった」と指摘する。その上で「適切な投資行動を市場の参加者が行える前提は、正確な情報の開示だ。現在の市場混乱の根本にあるクレジット市場を中心にした損失の実態を隠したままでは、投資家に不利益になる」と述べている。

米市場関係者の中にも「米銀がゾンビ企業だとのイメージを強めるだけだ」との批判がある。

一方で、時価会計基準の緩和は、株価の急落を回避し、実体経済が回復するまでの時間を稼ぐメリットもあるという“擁護論”も、市場には存在する。米国による時価会計基準の緩和は、やむを得ない措置だったのであろうか。」

 圧力で押し付けられた時価会計であるがアメリカに不都合になると勝手にルールを変更するグローバリズム。これから不良債権を償却しても仕切れないほど出てくるはず。アメリカの10年不況の始まりである。かつての日本の銀行のように。
 金融波乱と自動車の販売不振はまだまだ続く。

春更けて2009年04月22日


 繰り返し雑誌読むなり目借時

 さみどりの自然が恋し春深む

 春尽きて桜並木も薄暗し

 ハナミズキ咲きて想ひしヤマボウシ

 ハナミズキ山へと誘う白い花 

 春嵐高層の夜の窓揺らす

    NHKラジオから
 行春や認知症病む妻の介護談

漢検の行方2009年04月22日

 先だってから財団法人日本漢字能力検定協会の会計疑惑が連日新聞に載らない日はない。理事長の大久保昇さんが任意団体から育て上げて財団法人になったのがきっかけで受験者も増えたようだ。今は漢検ブームといわれるほど周知されている。
 実は私も十数年前に準1級を受検したが不合格であった。内容は明治文学の作品から採用されたと記憶している。級があがるほどマニアックになる気がして以降は止めた。
 しかし、検定自体が好きな人も多いから受験者は年々増加する一方らしい。それに伴って協会に入る収入も相当な金額に上る。試験問題は増えた分だけ印刷すればいいのでコストは安くなる。新聞雑誌書物などと同じで部数が増えれば試験問題1冊当りのコストは下がるから協会には追い風が吹いていた。笑いが止まらなかっただろう。
 余剰金は無税で処理できるから宗教法人と同じだ。検定料の値下げで還元すれば良かったが権威を守るためか欲かは知らないがそうはしなかった。監督官庁の文部科学省も指導してきたが従わず、今回の措置となった。大久保さんあっての漢検と思うので解散するのがいい。今年を最後としてもいい。
 協会自体はアカデミックな権威があるわけではないし、ただの模擬テスト業者である。自分が関心のある分野で不自由なく使えればいい。分らなければ辞書を引く。辞書を引くために本を読むという考え方もある。
 山岳書、俳句書には気象、山村民俗、文学、歴史、動植物、地学などの知識の集成であるから漢字の知識も膨大になる。とても漢検に受かるくらいでは手に負えないことだろう。
 以前もある書物の原稿をチエックしていたら「対峠」という漢字がありはてと首を傾げた。そしてこれは多分「対峙」ではないか、と執筆者に聞いたらそうであった。執筆者はPCを使わず、手書き原稿を会社の若い女性社員にワープロ入力してもらっていたことが分った。峙(じ、そばだつ)が読めないので良く似た峠と勘違いしたかな。こんな間違いがあるから漢検もブームになるのだろう。しかし、漢検よりも新聞をキッチリ読むことが勉強になると思う。

無事是名馬2009年04月24日

 今日、健康診断の日が8月某日と知らされた。勤務先でも6月にやるが定年を前にして一度総点検をしておけばと勧められたことによる。以前にも健診の結果ガンを始め病気が見つかったそうだ。そんなに頑健な体でもないし用心に越したことはない。
 登山、スキーを30年以上も毎月切れ目なく継続してきて病気らしい病気はないし、怪我も記憶にない。無事是名馬という言葉を思い浮かべる。「競馬では、なんの故障もなく、長い間第一線で活躍できる馬こそが名馬である。競馬ファンだった小説家菊池寛が禅語の「無事是貴人」を捩(もじ)って言った言葉。一般に、華々しい手柄などなくても、大きな災禍(さいか)なく、長い間活躍するのが一番である。」ということ。元々の無事是貴人はぶじこれきにんと読む。禅の言葉で「 厳しい修行規格に従い、妙法に修行して転迷開悟の実をあげ、更に悟後の修行で悟りの臭みをぬき去り、到達した迷悟両忘、酒々楽々の境涯からさらに無作無心の高貴な境涯に体達した人物こそ貴人。無造作に自然法爾に行ずることが「無事」の意味。単に事故の無い安全、有閑徒食と間違えてはならない。」と解説があった。この解説の最後を読むとどうも自分には当てはまらない。
 折りしも今日のNHKラジオから痩せ型より太目の方がいいという某大学の研究結果が流れていた。ベスト新書にも柴田博『病気にならない体はプラス10Kg』(2008・6・20)があり、標準体重65Kgに10Kgを足せば75Kgなので丁度ピッタリ。しかし、登山には少し重いのでせめて68Kgにはしたい。第一章で「メタボなんか気にするな」と激を飛ばす。嬉しくもあり、慎重に受け止めたい。
 大人になれば基礎代謝量が減って太めになるのは自然なことである。実際、周囲を見回すと痩せ型の人は病気をするとガタガタと健康を損ねやすい。痩せるためにトレーニングすると汗と共に微量栄養素が抜けて補充が充分でないと次第に健康を害する。今朝のラジオはそのことであろうか。
 ここ数年の内に勤務先の上司らが7人も70歳を前にして鬼籍に入った。つい最近まで仕えていた人ばかりだ。山仲間、先輩も70歳の坂は越えがたいものらしい。何人かの人を失った。人生の山坂はこれからである。

名古屋市長選挙 期日前投票へ2009年04月25日

 昨日、勤務先の帰りに区役所で期日前投票を済ませた。あれっという感じであっさり終った。従来の不在者投票が改善されてシンプルになったのだ。誓約書というよりアンケート形式の用紙に理由を○して提出すると投票用紙をくれる。そこからは当日の投票と同じであった。従来は封筒に入れたりしたようだが・・・。平成15年に改正されたからまだ6年を経過したばかりである。だから今回が初体験だった。
 ChunichiWebによると「26日投開票の名古屋市長選で、市選挙管理委員会が19日午後8時現在でまとめた期日前投票者数は3万5499人に達し、前回市長選での同時期(投票日の1週間前)に比べ約3・5倍に達した。28年ぶりに主要政党の相乗りが崩れた市長選への関心の高さが期日前投票にも表れた形で、投票率は「50%」の大台に乗るとの期待も出ている。

 市長選は1977年まで70-40%台の高投票率を保ったが、相乗りとなった81年以降は低下。松原武久市長が3選を目指した前回は27・5%と過去最低の81年の26・26%に次いで低く、市民の「しらけ」を象徴した。

 期日前投票も、前回は最終が3万8553人で、今回は既にこの数字に迫っている。大幅増について市選管は、2003年に不在者投票から切り替わり、投票できる条件が緩和された期日前投票制度が浸透してきたことに加え、有権者の関心が高いことも理由とみており「投票率は50%以上になると期待したい」と意気込む。」とある。道理で多かったはずである。

 市民税10%減税、市長の年収は800万円と数字ではっきり訴える河村たかし候補がリードとあるのも時代の流れをしっかり把握しているから。具体的に数字で訴える手法はまた選挙通の田中角栄さんが得意とした。分りやすいし、経済収縮の時代に適ったもの。景気が良くなれば相応の年収に戻せばいい。パフォーマンスと批判していた他候補も追随しだしたそうだ。
 太田義郎候補は最も親しみやすく、個人的には投票したいが共産党推薦が気になる。今や共産党は存在価値があるだろうか。ソ連は崩壊、中国も香港、台湾の繁栄に学び資本主義化、ベルリンの壁も崩壊した。派遣切りにあった人らが共産党に多数入党しているとも書かれるが個人の経済的な救いにはなるまい。それに日本は江戸時代から高度な資本主義の国家であるが行政は社会主義と揶揄される。有能な官僚が握っているからであろう。
 細川昌彦候補は東大卒の官僚出身なので名古屋市政には最も不似合いな人材と思う。東大卒は頭が良いだけでなく粘り強い性向もある。社長を始め各界のリーダーに東大卒が多いのは自分の頭をいじめて考え抜く姿勢が評価されるのだと思う。多くの同僚が脱落して最後に残るのが東大卒なのだ。しかし4年間という短期間ではその特性は発揮できまい。
 そんな訳で河村たかし候補が圧倒的な票を獲得する可能性が高い。反面で小沢一郎党首の動静で揺れる民主党所属ゆえに危ぶむこえもある。
 どんな結果がでるか。

『拒否できない日本』(アメリカの日本改造が進んでいる)を読む2009年04月26日

 著者は関岡英之。文春新書376で平成16年4月20日に発刊されるやおよそ半年で14刷というから相当な反響があったかに思う。経歴は慶応大学卒業後、当時は外為専門の東京銀行に入行し、証券投資部に配属される。職場でアメリカのグローバリズムの洗礼を受ける。バンカーの仕事は14年間で一旦退職し、早稲田大学大学院で建築を学ぶ。37歳で北京で行われた国際建築家連盟世界大会に参加して再びアメリカのグローバリズムの浸透に触発される。ここで建築家の資格制度を国際的に統一しようという、決定がなされた。1999年6月のことだった。この事件をきっかけにしてアメリカの対日戦略を調査し始める。それも秘密文書の発掘ではなくHPなど公開されている情報源ばかりという。
 著者は後書で「今の日本はどこか異常である。自分たちの国をどうするか、自分の頭で自律的に考えようとする病がどこかで深く潜行している。」と危惧し「アメリカ政府の日本政府にたいする『年次改革要望書』なるものの存在を知ったとき、それが病巣の一つと」気づく。次々に疑問を解明した。それが本書の狙いであった。
 あまりに面白くて?ぐいぐい引っ張られて深夜に及んでしまった。これまでの不可解な事件がさてはあれもか?と思わせる示唆に富んでいる。ロッキード事件では田中角栄だけがアメリカ発の情報漏洩でやられた。他の政治家もあると思うが田中角栄さんだけはアメリカから自立する考えだったために嫌われていたという別人の説もある。
 アメリカから見れば当時のソ連よりも日本の方が脅威と感じている。中国と組むのも不思議であるがアメリカから中国に相当な情報が流されている。中国の反日政策、アメリカのバッシングもおなじ基盤であろう。日本と中国が仲良くなるとアメリカには不利益なのだ。ロシア、韓国も同じである。アメリカの国益に適うように日本の隣国と紛争の種を作る。 
 金融、貿易だけでない。日本の司法改革にまで口出しをされる。検索である掲示板のこんな投稿がヒットした。
「郵政民営化のときは、批判や反対があったのに、共産党、社民党を含め国会は全会一致、司法権力も協力、日弁連翼賛、メディアも一切批判しない裁判員制度や法曹人口の拡大。 実はこれは、郵政民営化と同じように、アメリカの年次改革要望書によるものであった。 以下略。
 まったく厄介な同盟国である。戦争は勝たなくては行けない。戦争に負けたばっかりにアメリカの言いなりにならざるを得ない。しかし、戦争には負けたが繊維、電機、自動車など工業製品の貿易では勝った。アメリカの生命線だった金融は自壊し、ITバブルも弾けた。驕る平家は久しからず、という諺そのままである。今は相手も必死なんだ、と思う。日本の弱体化よりもアメリカの方が先に弱体化するかも知れない。そうなると日本が望まない円の基軸通貨化もありうる。混沌とした世界情勢が続く。
 それにしても丹念に調べたものである。

八事の緑2009年04月27日

 26日は北の山が荒れるとの予報で登山は中止。自宅で休養となる。名古屋市内は雲が厚いものの晴れているので本を買いに外出した。玄関のドアを開けると隣りの女の子が何時の間にこんなに背が伸びたか、と思うくらいに成長していた。しばらく見ないので見違えるほど。しかも挨拶もしてくれる。最近まで母親にくっついていたばかりの姉妹が今はもう飛び跳ねるように狭いマンションを駆け回る。12Fからエレベーターを使わず、階段で降りるという。自立心も成長している。若い両親はどうやら投票に出かけるようだ。
 外に出ると雨で空気中の塵埃が洗われて綺麗である。正に風光る、否風薫るか。車で幹線道路に出ると渋滞気味であるが八事から名古屋大学方面に行くと街路樹のハナミズキの白い花と柔らかい緑色が美しい。特に名大周辺は輝くように美しい。ノーベル賞効果でハナミズキまで元気を得たようだ。
 今池に近づくと今度はピンクがかったアメリカハナミズキの街路樹になる。こちらも美しいがビル街なので余り映えない。コインPに駐車。新聞広告で見た『高浜虚子の世界』など文庫本合わせて数冊を買う。山の本のコーナーも見るが食指を動かす本はない。以後自宅に戻って読書。外出前にセットした玄米御飯が炊き上がっていた。早速カレーを作り食す。玄米自体は美味いものではないが排便がホントに楽だ。定年後は玄米食中心に切り替えたい。他に春牛蒡のキンピラなど。これも食物繊維が豊富でヘルシーだ。健康とは体内の循環を促してやること、と気づく。脂肪分の多い食事、酒を飲んでもいいがスポーツで汗を流すことでカロリー消費を促す。登山が健康にいいわけである。
 27日朝刊は河村氏の圧倒的勝利を伝える。ある程度読めていたが実現して嬉しい。公約を果たすのみ。市議の抵抗というが市議も選挙で選ばれる。抵抗する市議は次に落選となるから妥協すると読む。何せ51万票であり、次点を大きく引き離す。これが民意である。
 今朝は清清しい。又、誓子の俳句を思い出した。
     麗しき春の七曜またはじまる    山口誓子

太田和彦『シネマ大吟醸』(小学館文庫)2009年04月27日

 昨日買った本の1冊。副題に「魅惑のニッポン古典映画たち」とある。小津安二郎、黒沢明、成瀬巳喜男、溝口健二、木下恵介或いは市川昆らを巨匠、名匠とか高い評価が与えられている。しかし、島津保次郎、マキノ正博、稲垣浩、清水宏、五所平之助らになるともう記憶に結びつく映画が思いつかない。
 この文庫本は名作や名監督の影に隠れた知られざる作品の紹介が狙いである。裏表紙にも「黒澤、小津を卒業したあなたに贈る知られざるニッポン古典映画の世界。」とうたっている。
 2乃至3のレンタル店や愛知県図書館のAVなどで観たい作品はすべて観たがなにか物足りない。こんなものではないはずと思っていたからこの本が目に飛び込むとすぐに求めた。パラパラ立ち読みしてすでに観た映画は98本の内、見事に殆どない。「丹下作膳余話・百万両の壷」「また逢う日まで」「東京暮色」の3本だけ。レンタル店にありそうなのは「銀嶺の果て」くらい。「小原庄助さん」はスーパーの特設売り場に1000円で売っているのを見た。
 これ等の内販売されていると分ったのは清水宏の諸作品である。水面下にはまだまだいい作品が沢山あることを知って豊かな気分になった。紹介されていた東京・神保町シアター(2007年7月開館)のHPにアクセスすると垂涎の作品が上映されていた。Laputa、新文芸坐などもいい作品が勢ぞろいだ。たまにチエックするがこの所多忙で見ていないと見逃すことになる。そうはいってもおいそれと東京まで映画だけを観には行けない。東京に転居したいなあ、と思う。
 久々に映画への欲求を刺激させてくれた良書でした。これまではもっぱら双葉十三郎『日本映画ぼくの300本』(文春新書)をバイブルにしていましたがもう1冊加わった。
 ちなみに清水宏の評価を調べると俳優に演技させない、自然体で、指示しないそうでこれは小津さんの流儀に似ている。P152を読むと溝口健二の言葉を引用して「清水君は天才です。ぼくや小津君は努力家に過ぎない」と賞賛。小津も清水宏のような天才から薫陶を受けたんだな、と思わせます。1作だけでも観たいものです。

パーキンソンの法則2009年04月28日

 たった今4/27からの新名古屋市長・河村たかしさんのHPにアクセスして10%減税の秘策を伺いました。
 Uチューブなるメディアを通して明朗快活に語られています。一言で言えばこれは「パーキンソンの法則」による分析かな、と直観します。
 WIKによると「、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」(第一法則)、「支出の額は、収入の額に達するまで膨張する」(第二法則)というもの。以下、第一法則について述べる。

パーキンソンの法則は、英国の官僚制を幅広く観察した結果に基づくもので、たとえば、イギリス帝国が縮小していたにもかかわらず殖民地省の職員数は増加していたとパーキンソンは指摘している。

パーキンソンによれば、このような結果は、 (1)役人はライバルではなく部下が増えることを望む、(2) 役人は相互に仕事を作りあう、という2つの要因によってもたらされる。また、パーキンソンは、官僚制内部の総職員数は、なすべき仕事の量の増減に関係なく、毎年5~7%増加したとも指摘している。」ということなのです。
 つまり、ウミが溜まっているというのはこの無駄な出費であり、明らかにされない(したくない)裏金がまだあるのです。あんなものではない筈です。よく予算を使い切る、と批判される役所の無駄なカネ使いの意識革命をやろうとしているのです。例えば市長が外泊する際のホテルの部屋は予算はxxx円だがもう一段グレードの高いxxx円で、その差額を裏金で支払う。これは実際に岐阜県の裏金問題で明らかになったことです。
 10%減税は実現可能です。
 今は苦境に陥ったトヨタですが好調な時期でも乾いたタオルを絞る、という表現でコストダウンの厳しさが伝えられています。トヨタは一時期の経営危機でコスト管理の厳しさを零細な企業経営に学んだはず。カンバン方式も元はといえばカネ、人、コネなどないない尽くしの知恵から生まれたもの。当座の生産に間に合うだけの資材の仕入れと生産で無駄な仕掛在庫を減らす。名門企業が経営不振に陥ると再建役で乗り込んだ経営者がやることは徹底した無駄の排除です。最近亡くなった評論家の上坂冬子さんはその経営危機の最中に入社し、社内の様子を初期の著作に書いています。今のトヨタはその苦難の時代を忘れたのですね。
 名古屋市役所には一流大学を出て難しい試験をパスした優秀な人材が大勢勤務しています。そのはずです。カネもあります。河村さんは中小企業の経営経験、国会議員の経験を通じて豊富な知恵を蓄えているはずです。河村たかし市長の方針を理解して取り組めば実現は可能ですよ。パフォーマンスの批判は当りません。
 4月から区政協力委員を仰せつかっています。最初の会合で驚いたのは使いもしないバッジの貸与、準公務員の辞令書、読みきれない文書配布、交通安全の黄色い制服の貸与など常時使うことないものへの出費でした。全区では相当な費用です。こちらは地域ボランティアの積りでしたが市政の雑用係りです。もっと誇らしい仕事にならんですかね。
 河村市政に関心をもっていきたい。