越中飛騨山中吟2008年06月21日

 夏山や吊橋に次ぐ梯子攀づ

 いざといふ時は頼もし避難小屋

 カタクリが六月に咲く越の山

 タムシバが春ならぬ六月に咲く

 お前もかハルリンドウが夏に咲く

 ムシカリの白き花見ゆ尾根路かな

 笈(おいずる)の青峰すっきり聳へたり

 梅雨晴れの大笠青き色したり

 雪渓は白山に寄り高まりぬ

 夏山や飛騨一円の眺めあり

 郭公やひたすら登る尾根の道

 ホトトギス鳴く時だけは耳澄ます

 老鶯が集まってゐる木立かな

 白ブナが固まってゐる夏木立

 追ひ越して行く登山者みな若き

 ひたひたと登るなり古希ものとせず

 遅れ行く老登山者の後を追ふ

 単独の登山者鈴を鳴らし行く

 生き生きと囀る鳥や夏木立

 鮎雑炊待たされる身の辛さかな

 テントにて宴や鯖の鮓つまむ

 越中と飛騨の境のキャンプかな

 明け易し湖畔の音の始まりぬ

 間欠で湧く水ホースにて引かれ

 これやこの普羅の憩ふや栃の花

 鶴平と刻む墓見ゆ登山口

 鶴平の墓を守らん夏木かな