荒島岳の谷を遡行 再びの工大ルートを下る2007年07月30日

 荒島岳は深田久弥の日本百名山の一つで余りにも有名である。既に三方向からの登山道を登っており一件落着と思っていた。ところが山仲間のW君が谷から登ると言い出した。一体どんなルートかと思ったらかつて2回登降した工大ルートと呼ばれる下山登山道に沿った谷であった。
 ナカニシヤの沢のガイドブックには鳴サコの名前が掲載されていた。昨年秋は道を間違えて失敗。泣く泣く下山した。今回はその雪辱戦である。
 例によって7/28前夜高速を飛ばす。今回は4名が参加。下山のキャンプ場でミニ宴会後早々に寝る。
 7/29、朝は結果としてゆっくりになってしまった。アルコールは控えめにしたのだが。朝食からテント撤収を手早く済ます。登山口の荒島谷川に沿う林道のゲートに着いた。空はどんよりとまだ梅雨空である。北陸はまだ明けないようだ。
 7時50分、歩き出すとかなり急な坂道に感ずる。鳴サコの入口までは30分ほどで着いた。ガイドが書かれた時期にはまだここまで林道は開通しておらず一旦本谷に入ってから支流である鳴サコに入渓した。3mの滝は林道の下に埋まっているはずである。
 いきなり狭い(つまり迫=サコ)ゴルジュの中の滝に出会うから面食らう。いくらなんでもここは巻くことになる。右のルンゼに入る。W君はちょっと苦労しているようだ。後で続いていくと急で足場も少ない。いきなり悪戦苦登させられる。
 突破してからもすぐには谷に下れそうに無いくらい急な草付である。横断しながらやや高みを目指す。すると別の小谷があり支点を見つけて懸垂で鳴サコ本谷に下降した。
 鳴サコは典型的なV字谷である。周囲の山腹は壁のように急斜面となっている。谷に近いところでは小潅木で尾根に近いところでは少し高い樹林である。ビバークに良さそうな台地とか沖積地は全く無い。小さな滝がいくつも現れる。谷はまるで非常階段である。それに樹林に覆われていないから空は開けっぴろげである。しっとり感のない渓相だ。
 特別に困難を感じることもなく進む。すると最後まで気が抜けないなあ、と思わす12,3mの滝に遭遇した。右端のルンゼが使えそうだがリーダーのW君は滝芯のすぐとなりの枝沢を構成する滝の突破を狙ってザイルを出した。しぶきを浴びながら中段まではなんとか登れる。そこから左へが中々登れない。遠くからでは状況がつかめず時間ばかりが経過する。ようやくハーケンを打った。2本目3本目かで滝を抜けた。
 2番手で続いていくとヌルヌルで滑りやすいいやな岩質である。ただし足場は意外にあった。ザイルがあると心強いので難場でも何とかクリヤした。ここを突破すると二股が現れる。右をとる。地形図と首っ引きで入念なRFが必要になった。沢の水量はがくっと減った。谷が立ってきた。潅木が覆いかぶさる。源流が近いが高度計ではまだまだ標高差がある。
 こんなところで雷雨にでも遭ったら大変だな、と懸念したが幸い天気は今以上に悪くはならないようだ。雲の中に突入する感じで山頂近辺の岩場に着いた。地形図にも表現された岩場である。W君らは右に振ったが私は左から岩場を回りこみ、優しいところを登りながら左よりの尾根に上がり笹の中の道を探ってみた。微かな踏み跡があった。それを辿るとすぐに山頂であった。3時45分に山頂を踏んでから下に向ってコールを繰り返したが反応があった。小寒い山頂からちょっと下って風をさけて皆を待った。16時15分に全員揃った。ハクサンフウロの赤紫色が濃い。シモツケソウの多い山である。
 16時30分、霧深き山頂から工大ルートを下山。笹に埋れた廃道同然の道を歩いた。やがてぶな林の中のいい山道になった。それもすぐに終り、急転直下のごとくまぼろしの大垂の下流に着いたのは18時30分だったか。もう薄暗くなりかけていた。そして鳴サコで19時過ぎ。白いセメントの林道に助けられてノーランプでゲートに着いたがもう真っ暗であった。 日帰りの限界を越えた沢登りであったと思う。