映画「秋津温泉」鑑賞2007年07月23日

 ある古い山仲間の懇談会で映画の話題になった際岡田茉莉子の「秋津温泉」が話題になった。気にしていたが久々にレンタル店を眺めたらその作品が入荷されていたので観た。
 まるで岡田茉莉子の着物ショーという側面があった。事実着物も岡田自身が選んだという。頼りない男との腐れ縁の果に最後は死ぬから「浮雲」に酷似しているとの世評であるが成瀬巳喜男の映画「女が階段を登る時」では高峰秀子が着物ばかりで通したし着物も高峰が選んだことも思い浮かぶ。それに山深い温泉場という設定は映画「雪国」の世界にも通じる。とにかく主役の男が性格がはっきりしない、だめな男、という設定は女優を引き立てるためであろう。
 岡田自身がプロデュースしたこと、監督を選んだことなど岡田の積極的な映画作りが功をなしてこの映画は大ヒットしたらしい。それに女優としてこれ以上ないくらいに美しく撮影されていた。多くの映画ファンは着物姿の美しい岡田に魅入ったであろう。奥津温泉や津山のロケ地も美しかった。件の山仲間から見れば同世代だから一層印象が良かったと思う。
 様々な視点から考えても楽しめた映画であるが前に観た成瀬映画の印象があるせいで過去のヒット作のいいとこどりといったら怒られるかな。
 舞台の背景となった中国山地の奥津温泉は一度登山で行ったことがある。多分泉ヶ山という一等三角点の山を目指した際に通過した。うろ覚えでは寂れた山間の温泉地であり、松本清張の作品の世界だなあ、と同行の人が云っていた。