遠藤正敬『犬神家の戸籍』を買う2022年02月18日

 行政書士のフェイスブックに表題の本がアップされた。ジュンク堂栄店で立ち読みしたら面白そうなので買った。昨年10月の発刊で3ヶ月経過後だがジュンク堂栄店に1冊あった。しかも法律家向けの専門書のコーナーである「社会 戸籍・国籍・出入国管理」の書棚でした。
 現在進行中の相続実務でも戸籍収集には苦労した。曰く、生まれたところが必ずしも本籍には非ず。被相続人の父には妻でない女に生ませた子を認知した婚外子がいないか、母には離婚歴がないか、望まない妊娠をして生んだ子を養子にしていないか。区役所や市役所の職員とのやり取りから少しこの世界が分かりかけてきた。

 実際の戸籍はもっと煩雑で不思議に絡み合っている。事実は小説より奇なり、とはいう。最近読んだ本では乙川優三郎『脊梁山脈』に戸籍をトリックにした部分があった。
 さて、犬神家の戸籍の出版社側のHPの解説は
「その系図に刻まれた欲望と不条理。
飛び散る血しぶき、耳をつんざく悲鳴、謎かけを込めて“展示”される死体――。犬神家を襲った怪奇な連続殺人事件の背景には、何があったのか? 物語を読み解くカギは「戸籍」にあり。血で血を洗った一族の系譜を丁寧にたどりながら、社会に根強く残る「血」や「家」の秩序と価値観を炙り出し、近代日本の陰に光をあてる。」

[目次]

序章 『犬神家の一族』の読み方 

第1章 「犬神家」とは誰か 家族制度の転換期の物語
 1 「犬神家」とは誰か?――「家」すなわち「戸籍」なり 
 2 犬神家と死亡届――届け出るのは誰の義務?
 3 事件が起きたのはいつか?――敗戦から民主化へ、という激動 
 4 犬神家の戦前・戦後――日本製糸業のあゆみとともに 


第2章 犬神佐兵衛の戸籍 孤児に始まり、家長に終わる
 1 佐兵衛は〝捨て子〞?――親も生まれも知らぬ身で 
 2 佐兵衛の戸籍はいかにつくられたか?
 3 「犬神」姓のルーツをさぐる――系譜なき一家?
 4 信州の〝天皇〞佐兵衛――守り通した家長の座

第3章 婚外子がいっぱい 犬神佐兵衛の落とし種
 1 妾という存在――佐兵衛に「飼われた」女性たち
 2 正妻になり損ねた不幸?――青沼菊乃の悲哀
 3 犬神家の結婚と恋愛――日本の婚姻制度は柔軟か?
 4 「罪ある結合の罪なき果実」――婚外子の戸籍はこうなる
 5 横溝家の戸籍――悲劇の種は父の業?

第4章 養子たちの命運 日本ならではの「家族」
 1 ゆるやかな日本の養子制度――重んずるは血よりも家
 2 静馬の悲劇――つかみ損ねた当主の座
 3 婿養子たちの皮算用――縁組は吉と出たか?

第5章 戦争と個人の戸籍 事件捜査を左右したものは
 1 出征兵士と戸籍――幽霊は生きていた?
 2 戦争で麻痺した戸籍――事件捜査を妨げた原因


終章 犬神家の戸籍が映し出す「日本」 愛憎入り混じった一族の〝系譜〞
以上
・・・実際の世の中には背乗りがある。工作員や犯罪者などが正体を隠すために、実在する赤の他人の身分・戸籍を乗っ取って、その人物に成りすます行為を指す警察用語。『華麗なる一族』では祖父と息子の新妻との実子の真実をめぐる物語。