「岳人」10月号を読む2007年09月14日

 7月初旬以来第2特集の執筆で関わってきた「岳人」10月号が一足先に届いた。いつもと違って山岳景観の表紙ではない。ちょっと拍子抜けした。
 何とヒラヤマユ-ジ君のファミリーがオープニングであった。意外なまことに意外な感じである。「心とカラダと山登り」に加えて「女性よ、もっと山へ」というタイトルが踊る。岳人にかぎらず山渓でも昔から結婚は登山の敵か、といったテーマの特集があったことをちらっと思い出す。これは永遠のテーマである。今号はもう一歩踏み込んで女性のカラダを医療面からもサポートしている点で画期的である。しかし何となく一般女性誌の定番のテーマを借用した気がしないでもない。
 人口の半分は女性だから女性の登山者が増えれば雑誌も売れると踏んでいるのかも知れない。しかし登山のリーダーは相変わらず男性優位だから女性が積極的に情報収集するかどうか疑問だ。
 さて肝心な我々の第2特集は小津安二郎が愛した山へ!が中心である。山の雑誌を講読する中心層はおそらくこういう情報を欲しているんじゃないかと思う。つまるところ登山者をして行動に至らしめる情報である。行ってみたい、行ってみよう、そこに何があるか行ってみたい、という気を起こすかどうか。もっと知りたい、この目で見たい、と思うように。未知への探求である。
 古い「岳人」を一杯集めてきたのも未知を発見した新鮮な感動があったからだ。特に昭和20年代から30年代はそういう発見にあふれたレポートが多かったと思う。今はもう多くの山の情報がインターネット、ガイドブックで発信されて新鮮味は減退気味である。そこをどうブレークスルーするかこれからも編集者達の模索が続くだろう。
 昔は山(自然)を愛する人と登山(スポーツ)を愛することが渾然一体となっていた。今はどうだろう。ヒラヤマユージ君のようにクライミング(登山)という純粋なものだけを追求して環境的には自然のかけらもないところで楽しんでいる。つまりジャンルの細分化である。山渓がおかしくなったのはインターネットの影響もあるがこうした細分化した分野とのミスマッチかも知れない。今や山を愛する人は60歳以上が相場である。そして登山(スポーツ)を愛する人はヒマラヤから低山までまちまち。岩場だけでも一日楽しむ中高年もいる。
 十羽一からげで中高年に焦点を当てた編集は失敗する。多様で一面的でない多層的な(クロスオーバーな)編集者の力量が試されていると思う。我々の狙いはあたるかどうか。私自身は山も登山も愛する者でありたい。

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