登山綱(ザイル)干す我を雷鳥おそれざる2010年03月09日

石橋辰之助『家』から。
 雷鳥は1年中いるが俳句では夏の季語。穂高周辺の岩場で岩登りをしていてザイルを束ねて岩場に置いたのであろう。近くにいた雷鳥は逃げなかったというのだ。昨年6月も燕岳に登山した際すぐ近くまで寄っても逃げなかったから人間を恐れないこととは確かである。しかし、警戒心のなさが個体数を減らしてきた。近年は白山でも見つかったと騒がれた。
 そしてこの句で使われたザイルは戦前のことで麻であったと思われる。麻のザイルは水分を吸い易かったと思われる。すると硬くて重くなるから「干す」ことも重要なことだっただろう。
 昭和30年のナイロンザイル切断事故は井上靖の小説「氷壁」の題材にもなったが鋭角に当たると切れ易いことが認知されていなかった。それ以外は軽く強度が断然あり、水にも強く扱い易いこともあって今は全盛である。