映画「アイガー北壁」鑑賞2010年03月28日

2008年製作のドイツ映画。舞台はベルリンオリンピックを目前にした1936年のヨーロッパアルプスのアイガー北壁。未踏の北壁初登攀を狙った山岳猟兵のトニーとアンディの物語。1800mもの垂直の壁という。これは実話であるが新聞記者で恋人役などはフィクションじゃないかと物知りはいう。
 すべてが現地のロケでの撮影に思えたがカメラの位置を想像すると別の岩壁かセットもあるように思う。70年前の登山電車、服装、建物、登山用具、登山技術など懐かしい気分を醸し出す。登攀は三点支持に尽きるがハーケンの形は今と変わりない。これを鍛冶屋で自作する場面もあった。カラビナは形は同じでも黒っぽいから鉄製であろう。ザイルは当時のことだから麻と思われる。肩がらみは今でも一部で使われる伝統的な技術であるが当時はゼルプスト(ハーネス)はないので主流の技術だった。落石の多い山なのにヘルメットの着用もない。ツエルトは綿であろう。多分天然繊維しかなかったであろう。
 素朴な装備で初登攀へと動き出すが手に汗握る場面が多く、力が入る。思わず声も出そうになる。なんとか困難な壁を登攀して行くが天候悪化で下山する。ここからがこの映画の見せ場であり核心である。最初の難場でもしもの下山のために残しておくべきだったアクロバチックなトラバースの場所のザイルを外してしまう。これが原因で最後に全員遭難となってしまう。
 すべて人ひとりぶんしかない岩壁の場面ばかりであったが迫力があった。素晴らしい映画になっている。映画「剣岳」もリアリティがあったがそれを上回るほど。見ごたえのある山岳映画でした。