鑑賞 浅野梨郷の歌③2015年07月02日

他の山の雪は消えても能郷白山(4/26撮影)はたっぷり残る
歌集『豊旗雲』(昭和31年刊、武都紀叢書)から

春かすみ立ちてはつづく山又山美濃と信濃と雪をおく山

*立春以降まだ寒い日々が続くが春は確実にやってくる。3月になれば温められた水蒸気の蒸散で霞む。そうではあるが霞の彼方に美濃や信濃の雪山が見えているよ、というのである。具体的な山名を挙げないから勝手に想像を楽しめばよい。
 愛知県図書館の上階にあるレストランのガラス張りの彼方にはそんな風景も簡単に得られそうだ。例えば、北の方角で、春遅くまで雪をいただく山は美濃にあっては能郷白山がある。毎年4/13には猿楽を奉納する信仰の山である。この山は名古屋からもそれと分かる。信濃にあっては御嶽山や背後の中央アルプスであろう。恵那山も黒木に覆われているが早春は白い。