山岳遭難急増の背景2021年06月12日

 相変わらず、60歳以上の山岳遭難が継続的にある。ステイホームで確実なことは筋力の低下、体重増加、他人とのコミュニケーション低下などである。昨年の春から秋までの遭難はおおむね70歳以上、単独行、登山届の未提出で共通していた。
 今年はやはり70歳以上が多いことは否定できない。昨年とほぼ変わらない傾向にある。登山届未提出、単独行も同じ。
 そこでもう一つ深掘りすると、インターネット遭難の言葉が浮かんだ。山岳会には入らず、インターネットで何から何まで情報を収集して実践に移す人だ。装備、登山の方法、登山道のルートの状況など。ルートは改訂されないガイドブックよりは新鮮だろう。
 しかし、そこに落とし穴がある。鈴鹿でも奥美濃でも近年はヤブ山のガイドブックが多数出版されている。それを読んで無事に登山を果たせた。そして、その記録をSNSにアップする。するとSNSの仲間がそれを読んで行く。ところがバリエーションルートには登山技術が要求されることがある。鈴鹿なら西尾寿一『鈴鹿の山と谷』が出版されておびただしいルートが紹介された。道標がある登山道なら問題はないが、ネット情報でバリルートも一般化(拡散)されてゆく。
 比較的若い40歳代のとんでもない遭難の顛末記を読むと、初心者でありながら御池岳のT字尾根をたどり、道迷いで6日間もゴロ谷に閉じ込められた事件があった。あんなルートは昔はガイドブックには紹介されなかった。それが西尾氏の本で知られ、ネットで拡散されてしまった結果遭難してしまった。当事者は後年御在所山で遭難死したという。
 先輩について登山のイロハを教えてもらいながら実力を付けて行ったスタイルはもう昔のことになったのだ。これからは非常識なネット遭難が増えるだろう。