「行き先を決めた時に、旅はもう始まっている」沢木耕太郎2021年08月02日

沢木耕太郎「旅も人生も深めるならひとりがいい」
ソース:https://www.leon.jp/peoples/36420

 コロナ禍で自宅に閉じ込められ、本を読むしかなかったという40代の友人が『深夜特急』文庫版全6巻(新潮社)を25年ぶりに再読して、こうため息をついた。「吹き上げるようなエネルギーと狂気。これは学生時代の私に海外旅行ならぬ”海外冒険”を教えてくれた、価値観をひっくり返すような作品だったんですよ」。

 知識と覚悟があれば、貧乏学生でもバックパック1つ背負ってひとりで世界を歩けるのだと知った。何不自由なく用意された綺麗な観光旅行ではなく、現地の日常の中をその日の興味がおもむくままに旅して、日本の暮らしでは出会えない人々に出会い、漂白されていない貧困や危険、悪意にも出会った。自分が大人になっていく気がした。

 「『どこに行こうか?』で物語はもう半分できている」
沢木はこれを読んだ人に「異色の国内紀行文」と指摘され、気づいたことがあるという。旅の仕方が”一般的ではない”のだ。