「人生にも旅にも、ひとり人で生きていける力量が必要だ」 沢木耕太郎2021年08月01日

沢木耕太郎「旅も人生も深めるならひとりがいい」
ソース:https://www.leon.jp/peoples/36420

 「どこに泊まって、何を食べて、こういう景色を見て、という”普通の”国内の紀行文とは全然違うものですね、と言われて、自分で『あ、そうだったんだ』と意外な発見がありましたね。例えば『旅のつばくろ』の初めでも、記憶を確かめるために浄土ヶ浜へ行きますが、自分にとって意味のある場所に行くというだけで、そこが観光地であることや、そこで海鮮丼を食べることも重要ではない。要するに、自分が『どこに行こうか?』と思う時に、もう物語の半分はできているわけじゃない? で、実際に行ってみてどういう旅になったかで、残り半分のピースが合わさって、1つの旅になっていく」

 旅も人生も一緒、結局はひとりで歩くものだ。「ひとりで生きていけることと、ひとりで旅ができることは、わりと近いこと。もちろん何人かで一緒に人生を過ごせればいいと思うんだけど、どこかでひとりで生きられる力っていうのを持っていたほうがいいじゃない? 経済的にも、家事能力も含めて、男であってもね」

 身軽に生きていくために、誰よりも努力して優れた原稿を書き、どの出版社にも組織にも依存せずに済む強い立場を得る。依存せずインディペンデントであるために、自由であるために、沢木がどういうルールを自身に課して歩んできたのかが凝縮して語られたこの言葉に痺れた。生涯ひとつの会社や組織に依存して生きていくことが考えにくくなった、自立して人生を歩んでいくことを求められるこの時代の人々にも、響くメッセージかもしれない。