天白八事散策2007年11月11日

 11/3に紛失した鍵が今日夕方になって郵便受けに投函されていた。誰が拾得したか分からないが戻ったことは善意と受けたい。この1週間心の片隅でくすぶっていた問題が解決した。やれやれだ。新しい鍵を注文したがキャンセルした。遺失物届けも却下した。
 先週も今週も合計4日も山に行かれなかったのはこの鍵のことが大きかった。心に気になることがあると忘れたい半面かえって気になるのである。気になってそれどころじゃない、と思う。井上ヨウスイの歌を歌いたくなった。
 新聞でマークした新刊書を見に行ったが近くの書店では未入荷。八事の坂を越えて杁中の三洋堂まで徒歩でウォーキングした。運動不足を解消したい気分も手伝っていた。約4Kmはあるだろうか。
 塩釜口を越えると途端に歩道を歩く人が多い。車も多い。何だろうと思いながら登って行くと名城大学で行政書士の国家試験が行われたようだ。この群れは受験者であった。校門の近くで行政書士試験の受験指導の問題集を配布しているバイトがいて分かった。
 この試験は近年非常に難関になっているらしい。合格率は約5%という。平成14年に代理権が付与されたことで業容が広がった。つまり弁護士が手がけない数百万円以下の民事事件はこれまで法律のサービスを受けることが難しかった。代理権が付与されたことで交通事故、権利金の返還事件など庶民の法的なトラブルを行政書士がやれるようになったのである。それと共に法律知識も高度に求められるようになったことは必然であろう。数の上では無数といってもいいこの種のトラブルは減ることはない。泣き寝入りしなくても良くなれば依頼者も増えるだろう。
 一方で狭き門だった司法研修所のいわゆる司法試験は新制度への過渡期である。朝刊にも慶大法科大学院の教授が試験問題漏洩の責任を問われている問題が再報道された。これも司法行政の一部民営化である。司法研修所でやっていた理論的な机上学習は法科大学院に移し、院生が自弁で学習することになった。新司法試験合格者は現行制度の1年半から1年の実務研修に短縮。半年分の税金つまり研修生への給料、教官の人件費などが節約されたことになる。
 今後、裁判に持ち込むでもない低額の法的トラブルは行政書士が担い、高額の訴訟案件は弁護士が担う。新たな需要は企業内弁護士としての活躍であるがこれは未知数であろう。苦労して突破した試験に加えて入社試験、サラリーマンとしての処遇の問題などがまだ見えない。
 英国では法廷に立たない(事務)弁護士と法廷に立つ弁護士に分かれる制度らしい。日本では税理士、社会保険労務士、行政書士、司法書士などと細分化されているがすべて弁護士がやれる仕事である。米国の行政事情を述べた本はまだ読んでいない。英語ではLowerなのである。
 そんなことを考えながら坂を越えた。マイカーだと立寄れない飲食店からいいにおいがしてくる。久々の三洋堂に入るが立ち読みしてみると興ざめな本だった。人生経験のない人の本は軽薄である。
 再び同じ道を越えて帰宅した。坂の途中で寿司屋に寄った。回転でない店だ。〆て1600円也とはちと割高なお値段。すっかり暗くなった。街灯が少ないせいで夜道が不安だ。八事界隈には闇がまだある。