名古屋暮色2007年11月18日

 土曜日の夜から明け方にかけて何本か映画を観た。健さんの「新幹線大爆破」、市川雷蔵の「陸軍中野学校」とシリーズ、「娘・妻・母」など。そのためか起きるのが遅くなった。久々の市川雷蔵の映画であった。かつて「破戒」を劇場で観た記憶がある。それ以来であろう。
 遅い朝食兼昼食を摂ってからまた一休みしていたら外は夕方の気配。風が強そうだ。桜並木も冬紅葉となってきれいだ。友人からのメールで案内された山岳写真展へ行く。ドニチ切符を買って伏見へ向った。一回りしてからまた地下鉄で久屋大通りへ向う。名古屋に新しくオープンしたパドルクラブなる店に行く。
 北海道発のスキーとアウトドア専門店と謳う店である。店内はこじんまりしていて一見すると普通のスキーの店であるが品揃えが深雪滑降に適した板を中心に充実した感じである。いわゆるプロショップであろう。だが北海道をイメージした品物は殆どない。最近も札幌の秀岳荘から尻皮を取り寄せたばかりである。北海道を知る私には物足りない店造りであった。札幌に行ったら必ず寄りたい秀岳荘はこんなものまで売っているのか、というサプライズが楽しい。売れ筋ばかりの店はつまらない。
 しかし利点は同じビル内に立体駐車場があることだろう。無料サービスは3000円以上の買い物が条件であるが。車高2m以内も可能。繁華街ではこれは無理。名古屋駅前に開業して1年で撤退した大阪の登山用品店も駐車場が盲点だったと思う。東海地方のスキーヤー、登山者は殆どがマイカー族である。マイカーで乗り付けできない店は厳しい。郊外の店が少なくなった現在人気を集めるだろう。
 風が強い。まるで冬本番である。熱いラーメンが恋しい。今日は山も厳しかろうと止めておいてよかった。丸善に立寄るが目当ての本がない。隣のマナハウスにもない。この店も年内には閉店という。栄の紀伊国屋が撤退、マナハウスも撤退する。近場の駐車場付きの大型書店も撤退してしまった。本が売れない状況はまだ続くだろう。
 立ち読みで面白い本があった。上野千鶴子(1948-)の「おひとりさまの老後」。前夜観た映画「娘・妻・母」の続きが本になったようにしばらく読んでしまった。切実な内容であるがどこか浮世ばなれした気もする。著者の経歴が立派過ぎていけない。ウイットとユーモアのある著者ではあるが富裕層の贅沢な老後観でもある。先立つものはカネという現実と視点がない。映画の中の原節子も今更人に使用されて給料を得て生活できるスキルがないので就職は結婚しか選択できなかったのである。
 独身女性が増えたのも働いて生活費を得るスキルを身につけたからである。就職先として結婚した人も夫に先立たれたら結局おひとりさまになる覚悟で、と著者はいう。待ちきれない人は熟年離婚しているとも指摘する。果たして現実を正確に把握しているのであろうか疑問だ。
 私が理想とするおひとり様は上坂冬子(1930-)さんである。トヨタ本社の高卒事務員から文筆活動に転じた人。「何とかしなくちゃ」という本を読んだきりであるが著作歴をみると敬服にあたいする。ずっと独身のはずだ。辛くても好きなことをして人生を全うする点が凄い。印税で生活することが凄い。京都大卒で東大教授という立派なご身分に上坂さんのような野生は感じられない。