初読や温故知新をあらためん2018年01月03日

 『渓谷3』の前書きに「修練というのはおそろしいもので、30才から40才、あるいは50才の人が若い登山者とそれほど差のないはげしい登山をこなしている例をよく見る。
 これは若い自分から長年続けてきた経験の積み重ねを貯金として、この貯金を全部引き出さないでもちつづけてきたからにほかならない。登山をまったく行わない同年代の人には到底まねのできない芸当である。」
 執筆者は『鈴鹿の山と谷』の西尾寿一氏。まさに至言である。
 関西の登山家には見識の高い人がいる。西尾氏も間違いなくその1人としてあげてよい。登山家の中には初登頂や初登攀にこだわる人が多い。そして一気にやり遂げようとして遭難死する。そんな人に比べると関西の登山家は落ち着いて山を考えていることが分かる。
 中年になってから登山を始めたり、再開した人は機が熟するのを待てないのだろう。つまり経験の積み重ねを急ごうとする。ブランクを埋めようとする。そこに無理がある。最悪は遭難ということになる。
 ある登山家は臆病になれと諭す。その人自身も失敗の経験を積むほどに臆病になった。他人からは笑われた。後になってみると笑った人が事故に遭遇していた。
 松尾芭蕉の俳句理論に「不易流行論」がある。不易とは時代が変わっても変わらないこと、流行は時代とともに変わることの謂い。
 登山においても慎重(臆病)であることは不易といえる。様々な情報が飛び交い、流行に接するが振り回されないようにしたいものです。

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