梅雨の北アルプス・燕岳遊記2009年06月16日

 名古屋・本郷を午前6時過ぎに出発。中央道は通行量が大変多く通勤並み。駒ヶ岳SAで休憩するが女子トイレは行列だった。梅雨の最中の行楽客であろう。
 豊科ICからR147を経て北穂高の交差点で左折。北アルプス方面はガスがかかる。有明温泉に向う。山麓部を過ぎると羊腸の路を走る。カーブだけでなく上り下りもあるワインディングロードだ。野猿が横切る。左右にもいる。赤子を抱いている母猿もいる。小猿もいて遊びたい気になる。
 やがて大きな尾根を乗り越して下る。また登ると有明荘に着いた。Pはまだその先で谷を渡る橋を過ぎて左折。Pで身支度していると上空で雷様が鳴っている。パラパラと冷たいものも降って来た。嫌な感じであるが構わず10時過ぎ出発。 
 登山口へは若干車道を歩く。トイレもある立派な登山口である。道標にしたがって登る。雑木林からカラマツ林の中の急登が始まった。カラマツ林はまだ新鮮な青葉を保つ。すぐに天然林に変わる。落ち葉からゴゴヨウマツやシラビソの類の大木である。いよいよ亜高山帯の森の中の登山である。第一休み場、第2と続き、富士見もある。12時には昼食もとった。約30分間隔でゆっくりリードを取ってもらった。高い山は体力を温存し、ゆっくり酸素を取り込みながら登りたい。
 あれ、もう合戦小屋かな、という感じで着いた。ここでもトイレがあり、立派な休憩小屋である。スタッフが一人荷揚げ用の架線の作業をしていた。名物のスイカはまだ早かったようだ。
 小屋を過ぎるとすぐに雪が出てきた。アイゼンは着けず、ピッケルやストックのままで登った。小屋で森林限界を越えたらしく、樹林は低い岳樺が多い。そのために非常に明るい。三角点を過ぎると尾根に忠実な登山道になり、小屋も目前となる。周囲の眺望はガスで今一だが槍ヶ岳の穂先は見えた。左隣は大天井岳であろうか。更に目を移すと常念岳、山麓に長く稜線を延ばすのは鍋冠山であり、頂点の山は大滝山となる。
 快適な尾根を登りつめると豪華な燕山荘の冬用の小屋に着いた。左の雪渓でなにか変な鳴き声がして白っぽい鳥が羽ばたいた。雷鳥だ。まだ白い冬毛のままである。雷鳥は今恋の季節である。
 登山道を右回りに辿っていくと山荘の玄関に着いた。3時前であり、ゆっくり歩いても5時間とはかからない。立派な小屋である。中に入り、受付を済ます。時間はあるが私は寝不足で休養した。寒気の所為で非常に寒く見通しも悪いので燕岳往復は明日にした。スペースを宛がわれて少し寝て休んだ。夕食後も特にイベントはなく寝る。
 6/14の朝4時目覚める。外はガス。蒲団のままでも居れず、外の様子など窺うが芳しくない。朝食後何とか晴れてきたので燕岳に向った。約30分ほどの散歩である。風化花崗岩の白い庭園風である。晴れていればいいところであろう。三角点で休んでいると3mほど隣の岩の尖った先に雷鳥が縄張りを見張っていた。静かに下りて近づき写真を撮ったが雷鳥は逃げなかった。人を恐れないのはいいが生き延びていけるのかしらと心配になる。
 鈴鹿なら鎌ヶ岳から水沢峠辺りの雰囲気に似ている。あるいは羽鳥峰峠から釈迦ヶ岳の辺りか。清潔な山頂を後にしてもう下山するのみである。
 昨日よりはガスが多く遠望の効かない天気は残念であるが降雨でなくて良かった。高山の雨は寒いし、雪に変わることもあるので凍死もあり得る。まだまだ油断ならない北アルプスである。
 合戦尾根の途中でグリセードの真似事をしてみた。ピッケルを持っていたK女もやってみたが滑落するばかりで止められなかった。練習がいる。合戦小屋を過ぎて何度かの休み場は2回に一回休んで下山した。下る途中でも樹木の観察もした。足元の落葉から五葉の針葉樹があるのでゴヨウマツと見られる。最後の休み場ではホトトギスらしい鳥を発見。体長28センチもあり意外に大きな鳥である。
 再び明るいカラマツ林を下るとすぐに登山口に着いた。Pまで戻り、有明荘で入湯。ついでに蕎麦を食した。安曇野市へ走り、時間があるので田淵行男記念館に寄った。常念岳を中心に自然を対象とした山岳写真家である。雪形の写真でも有名であり、この人を知るきっかけとなった。登山は文化と教えてくれた人でもある。
 麦秋と植田に彩られた安曇野を後にしたのは午後3時を過ぎていただろうか。