小高賢『句会で遊ぼう』を読む2013年01月04日

 幻冬舎新書。2012.9.30刊。著者は歌人が本命。俳句は余技でも短歌の素養があるからプロ級と見える。
 副題の「世にも自由な俳句入門」に誘われてしまった。止そう、こんな安直な本は、と拒絶するのだが、誘蛾灯に入った蛾のごとく買ってしまった。
 というのも2010年5月にちょっとしたきっかけで地元のミニコミ誌で呼びかけたら見知らぬ人ばかり、それも70歳代の高齢女性ばかり3名も集まった。4人でどうなるかと実に自由な句会をスタートした。後日もう1人男性と女性が加わり、1人は病弱で出れなくなった。
 最初は実力養成とばかりに10句を募ったがえらい、というので5句に減らした。何しろ、4人の5句を一句一句披講してゆくとたっぷり3時間はかかる。その間に飛び交う人生論、趣味の話、仕事の話、歴史の話がない交ぜになって俳句が自分の意思から一人歩きする。そこのところが脱落者がでない理由と思われる。
 私の役目は宗匠役で、季語重なり、句跨り、韻文論、一句一章、俳句の歴史、虚子の話、先人の名句の引用、模倣と創造、写生、人間探求派のウソ、山本健吉批判、などなど23年間の俳句歴で得た知識、作句理論、鑑賞力を総動員しながら、添削、評価を加える。
 これを最初からいる人はみなメモに取られている。間違ったことは言えないから真剣味を帯びる。そして添削の結果、立派な俳句になれば感動もされる。その方は最初はお花畑的な人だったが、最近は言うことも理論的になってきた。こちらが言いにくいことも代弁してさらっと言われる。2年半でこれだけ上達するのである。
 こんな形式でお茶を飲み、食事をつまみながらやる。女性ばかりなので酒は入らない。たまには遠方や近場で吟行も体験してもらう。すると写生の意義も理解されやすい。高邁な指導者ではないから気楽に発言してもらうことをモットーとする。
 俳句教室や俳句講座を経験された人は権威を振りかざされるようで合わないと言っていた。そして講師の俳句結社に知らないままに誘導されてしまう。結社には出来上がった人間関係もあって入りにくいと言われた。私の経験でも気楽なものいいが嫌われたこともあった。
    甚平や一誌もたねば仰がれず     草間時彦
じゃないけれど、甚平のように肩の力を抜いてやればいいのだが、雑誌を持つ主宰でないと尊敬されない現実があるようだ。名句と言われる俳句でも意味不明、現在では理解できない俳句もある。主宰級でも散文的、平句のような軽い句を好む人もいる。短歌的な叙情を詠む人も居てそれが読む人に好まれる現実がある。叙景が本質とは言っているが・・・・。
 しかしだ。我々の句会は高みを目指し、例えば角川俳句賞を取るとか、結社賞を狙うとかではなく、日々の日常、旅で得た嘱目を書き留める。それでいい。であっても韻文の格はいる。だからレッスンプロとして助言する程度に留める。講師だと威厳をもって体系的に説明することになるだろう。だからカルチャーセンターの俳句からは名句が出ない、という批判をどこかで読んだ。俳句は学問ではないからね。知識先行は形はできているが、感動から生まれる句がない。きちんと教わるには俳歴の長い先生についた方がよろしい。
 それで今いる人たちは私の所属結社に入る気配は殆どない。向上心がないのではなく、ましな俳句を作りたい意欲はある。自分の句を誰かに評価して欲しいのである。形式的な教室ではないコミュニケーションの場が欲しかったんだ、と知った。帯封にも「句会は平等で開かれたコミュニケーションの場」とキャッチがあり、納得。著者は8年で合同句集も編まれた。出版人ゆえの悦楽だろう。
 そういえば、昨年12/10に死去された小沢昭一さんの所属されていた東京やなぎ句会のHPをのぞくと「お蔭さまで,この一月で,東京やなぎ句会は四十周年をむかえることが出来ました.
 まさか,こんなに長く続くとは思っておりませんでしたが,これもみなさまのお蔭と心より御礼申し上げます.
 初めは初心者ばかりでしたから,季語ってなんだ,歳時記ってなんだ,というようなところから始めました.それでも,四十年間毎月句作を続けていると,どうにか形になるもんですね.
 忙しいメンバーが,他の何よりも句会を最優先して,毎月十七日に集まります.
 日常の他愛もないことから政治の話まで,ああだ,こうだと大声で喋りつつ,歳時記片手に句をひねる――風流とは程遠い喧しい句会ではありますが,このひと時がとても心地よく感じられます.」
 正に是です。ここは40年の老舗、著者の句会は8年の中堅、我々は駆け出し。いつまで続くかは分からないけれど楽しくやれればいい。現在進行形の確認をした本でした。

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