冬の雨いつも独りのかいつぶり2010年01月28日

定本『普羅句集』古春亭から。昭和23年12月の作品。
今日も寒い一日だった。雨はそれほど降らなかったが高い山では雪であっただろう。立春まであと一週間ちょっとはある。まだ寒の内である。
この句では冬の雨降る中を一羽のカイツブリを見たというのだ。しかも群れをなさずにいつも独りだという。継続して観察したのだろう。冬の雨さえやりきれないのに身にしみる寂しい風景である。欝と躁があれば欝の気分が漂う。
 大和路や正月近き鳰(にお=かいつぶり)の水
が後に出てくる。どうやら奈良の弟子宅に招かれての旅吟のようである。大和路といえば同じ年には
 秋風の吹き来る方に帰るなり
という畢生の秀作が生まれた。
近くの天白川にもかいつぶりが多数生息する。水深が浅くなったので立って魚を取っているようだ。しかし、独りということはなく群れを成す習性がある。独りというのはかいつぶりに作者自身を見出し、寂しい心を映し出したものであろう。