幽境の谷 中ノ水谷から屏風山へ2008年09月18日

 秋の山焚き火の煙立ち込める

 秋風が火吹き竹めく大焚火

 名月や森の葉漏れより仰ぐ

 梨は皮剥かずに食べよ山の中

 沢胡桃五人家族のごとく立つ
 
 橡の実を拾い子らへの土産とす

 恐れ多き熊見し秋の谷の中
 
 澄む水を棲みかとしたり岩魚かな

 水脈細る秋の谷にも岩魚棲む

 食べられぬキノコが多し枯木かな

 穴惑い乾きし滝にとぐろ巻く

 霧の谷より登頂しても霧

 霧深き山から山を名指しする

 いち早くナナカマドだけ紅葉す

 赤い実がたわわに実るナナカマド

 不時露営やむなし谷の秋の暮

 遭難の二文字身にしむ白湯を飲む

 あるだけの衣着て尚もそぞろ寒

 蹴散らされツルリンドウの花転がる

 麓から天まで咲きし釣舟草