鈴鹿・佐目子谷からイブネ・クラシ・銚子ヶ口縦走2010年06月07日

 名古屋の金山駅前を午前7時30分に出発。桑名IC経由鞍掛トンネルを通過して滋賀県入りした。R365から県道34に左折。犬上川に沿う山間部を走る。筒井峠を越えると御池川水系に変わる。犬上では主に川に近い民家が多かったがこちらでは山の斜面に張り付いて建っている。
 予定では佐目子谷を遡行してイブネ・クラシに登り、銚子ヶ口から杠葉尾に下山。そのために下山予定地に車をデポした。登山口の佐目子谷は今は佐目町である。地名の語源を調べると谷川の出口、またはそこに開墾した土地の意味であった。R365の沿線にも同じ地名があった。
 Pで身支度して出発。二日分のザックはやはり重い。林道をしばらく歩くとすぐに谷の左岸の山道となるが一部は崩壊している。遭難碑のあるところで沢装備に切り替えてもらう。水量はずいぶん少なく感じた。しばらく降雨がないせいだろう。したがって川通しに歩いた。入り口では信じられない広大な沖積平野が拡がる。ほとんど高度の上がらない遡行を続けた。川幅が狭まるとほどなくして姫ヶ滝に着いた。ここで昼食とした。食後は滝を見学する。
 大きな岩が散乱する谷をぬっていくと落差4Mほどの滝に遭遇。ここは左岸にいい巻き道がついている。但し下るときはシュリンゲで確保した。中高年の骨は脆く、ザックを背負ってちょっとしたショックでも骨折がありうるからだ。高巻きはここだけで後は大した難場はない。
 谷を詰めていくと立ちはじめた。高度計でチエックしながら約800M地点をビバーク地とした。5人がめいめいツエルトを張る。食事も各自準備した。共同作業は焚き火の枯れ木集めだけである。まだ明るいが着火すると簡単に燃え上がった。するとみな集まってきた。濡れたものを乾かし、お湯を沸かして食事する。
 午後7時過ぎてようやく暗くなり始めた。ツエルトにもぐると谷の響だけが耳に聞こえた。遠くでは鹿が鳴いている。
 昨年の秋もこの辺りでビバークしたはずであるが雰囲気はまるで違った。今は緑が美しい。青葉若葉の谷である。
 6/64時に起きた。寒い一夜だった。しかし衣類は乾き、焚き火のお陰でぐっすり眠れた。ツエルト内でうどんを作って食べた。他の連中はもうツエルト畳んでいた。それから食事の用意であった。私とは逆である。
 濡れた沢シューズを履いて6時出発。地形図とにらめっこしながら佐目峠を目指した。昨年はチョウシを目指して途中で左折した。それらしいところをチエック。水量は減ったが絶えることがない。山道として理想的なルートであった。かつては登山地図に赤い破線路は表現されていたが今はもう踏み跡も定かではない。消滅したといってもいい。
 源流の果てには明るい空が見えた。峠が近いようだ。水量もついに絶えて峠の約30M北に着いた。今はもう誰一人旅人の通らない廃峠である。大きな岩に佐目峠の古い道標が無ければ誰も知らずに通過するだけであろう。
 峠からはイブネを目指した。そして冷涼な空気のさわやかな高原を味わった。イブネ北峰、クラシと縦走した。さて大峠を目指した。地形図を見てよく確かめたのであるが近くの尾根-谷尻谷から登ってくる尾根の赤テープに誘い込まれてしまった。
 約30分もしただろう。何か違う。見えるはずの無い山が見える。途中で出会った関西のパーティがお金峠から登ってきた、と言ったことを思い出した。高度計でも少し下りすぎと思われた。
 クラシ尾根に入ってしまったのだ。約40分でクラシ分岐に戻り、独立標高点の1145Mまで戻って稜線の分岐からつながりを確かめた。古びた道標が「まだまだ君たちは未熟だね」と言っているように見えた。
 クラシに来るとき枯れ木を払いのける反動で下顎をしたたかに打って口からの出血に驚き、手当てをしていた場所だった。重要な分岐を気が動転した状態で何気なく通過してしまったがメンバーの一人がこの道標を記憶していた。クラシ尾根に迷い込む前にもこの人は主張したのだが赤テープを見るとノーチエックでミスったのである。
 正しい分岐に戻り、縦走路に入るとクラシ尾根と良く似ていると感じた。もしも霧の中ならそのままワサビ峠まで下ったかも知れない。フナクボで一休みし、大峠をパスした。銚子ヶ口の三角点も踏んだ。これでもうガイドにもある登山道だから安心と下った。しかし、2回目のミスが待っていた。尾根から沢に下るところで直角に曲がった。しかし、地形図で尾根通しのはずという声。尾根に入るとたしかな踏み跡はある。すぐに意外なものが見えた。モノレールである。しかも大変急だった。
 ああ、これは違うな、と思ったが下ってみた。案の定風越谷に下る尾根であった。初心者がおれば戻った。それが原則であるが今日のメンバーには思い込みの危険を学習してもらった。クラシ尾根では地形図を充分チエックしなかった反省から今回は地形にこだわった。しかし、この道は整備された登山道なので素直に道標に従えばよかったのだ。 
 林道に下り、神崎川沿いの車道にでた。デポした車に着いたのは午後4時だった。10時間の行動であった。またもとの道を戻っていなべ市のあじさいの湯で汗を流した。
 反省点は多々あるがまずは無事に下山できたことを喜びたい。心配していた蛭も居なかった。メンバーには二日前からアルコールを絶て、といっておいたので被害はゼロ。私は他人にはいいながら自分では飲んでいたから1145Mでスパッツを外したら大きな蛭がころっと落ちた。パンツが血まみれであった。顎を打っての出血と蛭での出血で二重の遭難であった。