福田晃市『近思録』-朱子学のすてきな入門書を読む2009年11月13日

 この本は朱子学の解説書である。著者は「朱子学は世間で思われているような「封建道徳」ではない」という。「人の心を健全に育成し、世の中をよりよくしていくことを目指すヒューマニスティックな哲学」という。それならば結構な学問であるがなぜ行き違いが生じてしまったのか。
 どうやら封建制の時代の治世の書として活用されて、後の企業人がたとえば山岡壮八の「徳川家康」を読んで経営管理の参考にするなどして今の管理社会に浸透してしまったのではないか。家康の「百姓は生かさず殺さず」を下請けいじめに当てはめるとよく理解できる。
 『近思録』は全部で14項目あるがその中で8巻目の「治国平天下之道」はリーダーは1立志2責任3求賢の仕事をすることを説きます。指導者の心構えです。①誠になり心が散漫にならないようにし、②道の実践を自分の任務とし、③古典に残されている聖人の訓戒を信頼し④理想的な政治は必ず実現できるとの信念をもち、⑤現行の規則になず(泥)んだり、とらわれたりせず、⑥人々の言うことに左右されたり、惑わされたりせず、⑦理想的な社会を必ず現実のものとしようと堅く心に誓うことです。
 以上のことを河村たかし市長に当ててみると基本的に理にかなった政治家だと気づかされる。特に⑤⑥⑦は人々を市議会に当てはめるとよく分かる。①は年収を自ら減額し、退職金も辞退しているのでその覚悟のほどが伝わる。②彼は一所懸命なのである。多数の有権者が選んだのである。その期待に答えようとしている。とりあえず地域委員会なるものが早く現実化するように推移を見守りたい。