ゲオルク・トラークルの言葉2009年11月12日

 朝日新聞の朝刊「オピニオン」欄の石原慎太郎知事へのインタビュー記事が大変面白かった。各県とも知事級ともなれば多士済々であるが石原知事知事は出色であろう。
 東京五輪再挑戦のわけと題して長々と石原氏の考えがうまくまとめられている。手続きはきちんとやったし、プレゼンもよかった。しかし、周囲が覚めていて日本としてまとまらなかった云々。日本人論にもなっている。
 受動的な国民性を「海象」をあげて説明したり、該博な知識をさりげなく披露しながら環境を説いたりする。挑発的で物怖じしない態度は私の好むところである。少々うるさいところもあるが友人にしたい人間である。
 最後の締めくくりがまた素晴らしい。オリンピックに環境を押し出したい意向をオーストリアの詩人ゲオルク・トラークルの言葉を引っ張ってきた。「たとえ明日地球が滅びても、君は今日リンゴの木を植える」という。日本的な言い方に換えると愚直ということかな。しかし、愚直では詩的で文学者らしくない。作家石原慎太郎氏の面目躍如といったところ。やっぱり知事らしくない。
 ところでトラークという詩人なんて初見なので早速古書を当たって注文した。27歳で死んだ天才詩人ということは検索で分かった。この言葉自体大変多くの人に引用されていることも分かった。知る人ぞ知る詩人なんだな。

コメント

_ G ― 2012年10月08日 20時22分46秒

ゲオルク・ゲオルギゥのことばですよ

_ 小屋番 ― 2012年10月09日 00時30分09秒

お説のとおりでした。
なぜこんな間違いになったのかもう不明です。

_ 柴田昭彦 ― 2014年09月28日 05時06分31秒

この言葉をルーマニアの政治家ゲオルグ・ゲオルギウ(・デジ)のものと「偽装して」公表したのは、寺山修司「ポケットに名言を」ですが、本当の出典は、ルーマニア生まれでフランスに亡命した詩人・作家のコンスタンチン・ビルジル・ゲオルギウの小説「第二のチャンス」(1952年原著、1953年訳書、筑摩書房)です。この本の巻末に、マルチン・ルターの言葉として載せてあります。この言葉が世界で初めて現れたのは、1944年10月のドイツのヘッセン教会の回状で、ルターの言葉と「偽装して」公表されました。ルターの専門家の徹底した調査によって、この言葉はルターの当時の説教集その他のどこにも見当たらないので、ルターの言葉そのものでもないことが明らかになっています。ただし、ルターの言葉そのものではないけれど、ルターの思想をよく反映した言葉なので、「ルターの言葉そのものではないが、ルターに帰せられている言葉」であり、それを、「C.V.ゲオルギウが小説で紹介して有名になった言葉」ということになります。ゲオルギウの言葉なので、当然、「トラークル全集」(青土社)の1000頁余りのどこにもこの言葉はなく(全頁、調べました)、訳者の中村朝子氏にも確かめて、この言葉がオーストリアの詩人ゲオルク・トラークルのものではないことを確認しました。1944年に初めて出現した言葉なので、1914年に亡くなったトラークルの言葉でないことは当然です。石原慎太郎氏は雑誌「WILL」2014年10月号の207頁に「ポーランドの詩人のゲオルグ・トラークルの書いた詩の一説」と書いていますが、「ポーランドの詩人」ではなく「一説」も誤植で間違いだらけです。でも「一節」ではなく、「一説」となっているのは案外、誤植ではなく、正解なのかもしれません(おそまつ!)。詳しくは、私のサイト「ものがたり通信」の「真実を求めて」(「ゲオルグの謎」を含む)でレポートしています。この言葉は困難に直面した人々の心の支えになってきた言葉だと思うので、誰の言葉であるのかについては、もっと大事に伝えてほしいと思っています。

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
日本で一番美しい山は?
ヒント:芙蓉峰の別名があります。

コメント:

トラックバック