映画「若き日」鑑賞2008年08月31日

 久々に小津映画を観た。トーキー作品はみな観たがサイレント映画の方がまだ2、3見残していた。1929年。小津安二郎監督制作。副題に学生ロマンスとある。小津は19歳で伊勢の局ヶ岳山麓の尋常小学校の代用教員を勤めた後、ニート生活を経て大好きな映画の世界に入っているから大学生活は知らなかった。ちょっとした憧れもあって楽しそうな学生生活の一面を覗き見する感覚で撮られたように思った。
 1929年といえば小津は26歳。ニューヨーク大恐慌の年であった。失業者があふれて社会も不安定であった。まるで夢物語のような映画であった。それでも現在に至る影響は大きなものがある作品であろう。
 私が面白いと思ったのはギャグではなく当時のスキーの風俗である。かなり長めのスキー板に皮バンドでスキー靴を巻きつけるタイプの締め具。今でも締める感覚は分かるがあの当時は本当に締め付けている感じである。
 それにゲレンデといってもリフトが見当たらない。スキーヤーはみな歩いて登っている。雪も深そうなので長い板の必然性もあった。技術は直滑降中心で曲がる動作は少ない。ゲレンデでも山スキーに近い遊びであったと思う。
 主人公がゲレンデの真ん中でコッヘルで雪を溶かしてお湯を沸かし、紅茶を入れる場面も楽しい。どたばた喜劇であるがちゃんと時代を反映させている。当時はゲレンデに売店やレストランも無かったからである。雪山を映す場面もあったがあれが妙高山か、と思うが確信はない。
 この映画は戦後になって若大将シリーズのスキー映画に引き継がれた気がした。あの映画も2人の対照的な登場人物が面白おかしく展開する。スキーと恋を絡ませた物語である点が共通である。
 それにしても「毎日が日曜」「大学は出たけれど」など今でも古びない言葉を生み出した小津さんはやっぱり只の映画人ではなかったと思う。

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