中津川映画祭を楽しむ2007年10月08日

 今朝は大雨といってもいいほどよく降っている。地理勘ができたので今日は車で行く。朝8時過ぎというのに中央道は結構通行量が多い。平日の祝日ということでもう働く人がいるからだろう。
 中津川ICから会場へ向うとPはもう大方埋まっていた。朝から大入りである。9時半から「パッチギ! LOVE&PEACE」が始まる。井筒和幸監督作品。2007年5月公開。題名は韓国語で頭突きの意味。映画は1974年のクレジットが入り、時代を設定する。国鉄の争議を表現した車体の落書きにそれは現れている。乱闘騒ぎがあるがなぜなのか意味不明。
 佐藤栄作首相がノーベル平和賞を受賞した新聞記事も出てなぜあんな人物がノーベル平和賞なの、という疑問が呈される。沖縄返還を果たし、非核三原則を貫く、などが評価されての受賞であったと思う。戦争で奪われた領土を返還してもらうことは異例のこと。旧ソ連、ロシアは未だに北方領土の返還に応じないことを考えても明らか。逆にアメリカは対中政策上、日本を取り込み、日本とロシアとの紛争の火種を残す政治的意味があろう。これは監督の思想的立場が反日、親韓ということからきているのであろう。
 在日韓国人に対する優しいまなざしで描かれている。これも監督の出身地が奈良県であり被差別という人権問題に敏感な土地柄で育ったこともあるように思う。だが在日韓国人がなぜ在日するのかの訳は描かれなかった。済州島から日本軍の拘束から逃げてパラオに行った。あの戦闘シーンは凄みがあった。彼らは韓国には戻らずなぜ日本に流れてきたのか。爆撃を受けてアメリカの戦闘機を睨んだ朝鮮人はアメリカへの憎しみに変ったのか。在日にならない運命を選択できたはずであった。
 終戦後本来は本国に戻る手続きがとられたはずが大阪市のある在日朝鮮人は息子に向って「日本は戦争に負けたがすぐにアメリカに追いつく、本国に帰るより日本に居よう」、と在日を選んだ人が多かったらしい。中国も朝鮮も何分儒教の国である。この縛りが強い内は本国の発展もないだろう。かくして在日の読みは当たって世界第二位の経済大国になった。
 歴史的に文化伝来の誇り高い朝鮮民族に対して名前を変えさせたりしたのはいたく傷ついたであろう。強制的な労働、従軍慰安婦問題など未だに尾を引く。一つは福沢諭吉の対アジア蔑視、欧米を模範とする思想の啓蒙もあって当時の日本人の偏りが今日まで続いて来ていると思う。要するに中国人、朝鮮人は付き合いにくい、といっているのである。個人的に親密になれば大切にしてくれると思うが。
 映画を観終わったとき曰く云いがたい複雑な感情が残った。私は初めて知ったが監督自身は以前から結構人気があるようだ。こんな映画を知ったことも映画祭ならではの効用である。
 さて第二幕は待望の「滝の白糸」である。1933年の制作。サイレント映画を女性の弁士がしゃべりながら展開して行く。今時珍しい映画である。映画祭でなければ観られない気がした。もちろん初めての体験。
 主演の入江たか子(1911-1995)は華族出身の美人女優で当時22歳と美しさの絶頂期。対する岡田時彦(1903-1934)は30歳で美男の俳優として人気が高かった。肺を病んで死ぬ前年であった。物語は泉鏡花原作の「義血侠血」を脚色。監督は有名な溝口健二。当時大ヒットしたそうである。
 明治文学の香り高い上質の映画でした。70年を経てなお上映されるのも観客の心をうつ感動があるからである。およそ100分弱の間退屈することなしにドラマチックに展開していく。(原作の文語文のリズムもここちよさそうである。一度朗読のCDを手に入れて聴いてみたい。)
 観終わった後の澤登さんのファンサービスのトークも面白い。映画祭ならではの催しである。午後4時外は雨が止んでいた。山には厚い雲がかかりまだふりそうだ。高速でなくR19で帰った。

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