栃の木のある山2006年10月05日

 鈴鹿の神崎川源流を歩いていてふと足を止めさせられた大木があった。それは一目すぐトチノキと分かった。七枚の葉が掌状に広がる特徴は他の山でも良く見る。実のなる樹木は大切にされたのである。
 それなのに園芸種として品種改良されたことは聞かないし街路樹や植物園を除けば栃の植林は聞いたことはない。実は実には渋があるそうだ。手間隙かけて渋抜きをしてから栃餅などに加工して食される。いわば飢饉に備えた樹種であっただろう。
 三河では三瀬明神山に突き上げる栃ノ木沢がありもう大木は見られなかった。奥美濃では各地に見るが昨年はタケヤ谷の谷沿いで沢山見た。飛騨でも若栃山がある。木曽では福栃山がある。栃木県があるし、栃の木峠など各地に栃の地名は多い。三重県の南部には栃山があった。これは「新日本山岳誌」に取り上げた。栃が付く山は地元でも大切にされたと思うからである。
 熊の好物は栃などの団栗の実であるから今頃は冬眠に備えてせっせと食べまくっているだろう。でも鈴鹿では誰が採取するであろう。多数棲息すると見られる鹿であろうか。猿も食べるであろう。
 閑話休題。神崎川のかの大栃は幹周り2mはある。様々な樹種が薪炭林としてシロモジ中心になってしまったがそれすら今は大木になりつつある。やがて林道が延びて一斉に杉などに代わるとしたら自然もおしまいだ。どうか天然の公園として保護されたいものである。