小屋番の山日記

　能郷の山里の落ち鮎を食ぶ

　紫蘇の実を添へし岩魚の刺身食ぶ

　野分後の根尾川のまだ笹濁り

　前山もイソクラも見へ秋日和

　古（いにしへ）は山城なるや秋の山（文殊の森）

　秋晴れや濃尾平野を見晴るかす（文殊の森の山口城址）

　脅し銃山峡高く揺るがせり

　さはやかに一汗かきし里の山

　山に咲く萩の花見て秋を知る

　彼岸花山ふところに群れて咲く

　秋彼岸法事の後の昼餉かな

　稲刈りも間近や畦の曼珠沙華

　早生りの富有柿並ぶ露店かな

　秋日傘さす相談をしていたり

　根尾谷の奥に釣舟草咲けり

　猪垣も今は昔ぞ根尾の村

　水引や峠に続く谷深し

　テントにて仮寝をしたり露時雨

　秋の夜や山に寝に来るだけで良し

　秋雨やブナの尾根路を駆け下る

　山頂の狭霧に憩ふべくもなし

　水澄むや山葵採りつつ溯る