奥美濃・黒津山スキー登山 970m付近まで2011年03月10日

 3/8の夜は8時過ぎまで所用を済まして着替えもせず、高速に入る。一宮IC近くに来るとW君からの電話で現地は雨との情報。大垣ICから揖斐川を遡る県道を北上。雨の降る道の駅「星のふる里ふじはし」に着いた。寝入りばなのW君を起こして明日の打ち合わせをする。
 W君は1日休みだったので当初計画の徳山会館の様子も見に行ってみたがダムで通行止めという。この時点で徳山会館~上谷山~鏡山~ミノマタ~五蛇池山~黒津山~親谷林道の計画は白紙に戻った。
 代案として黒津山の往復のみに絞った。彼はこのところ立て続けに雷倉を3回も追い返されているし、私もまだ体にスイッチが入らない。何とかして1座でもスキーで山頂に立ちたい思いがあった。
 3/9、4時半、W君に起こされる。私の車に乗って親谷の出合手前の国道沿い付近に駐車した。(昨年の天狗山の沢をやったときと同じ)親谷には工事用の事務所があってそこだけは除雪されていたが少しで未除雪となる。平日でもあり工事の邪魔になるので離れて置いた。Pから親谷に歩いていくうちにいくらか薄明るくなった。空は星空、西の空遠くに雪山が見える。
         3月の親谷
 親谷は雪解谷となっていた。水流も勢いがあるし、水量も多かった。両岸は白い雪の平になっている。たっぷりの残雪が私の体にスイッチオンをするように見えた。
 スキー板にシールを張って6時丁度出発する。平坦な雪の林道をしばらく歩くと杉の木立に囲まれたイワナの森という野趣たっぷりのレストラン?に着く。防犯用の照明が点いている。人影はない。
 薄暗い林道を倒木を避けたり、残雪の切れたところでは面倒だが板を外し、また着けるという作業を何度も繰り返した。そのうち昨年沢登りで来たことがある大きな二股に着いた。7時半だ。林道の法面が雪で被さり、エッジを立てて慎重に通過したり、或いはデブリ、倒木といったバリアを凌いだ。話に聞いていたハイエースの廃車のあるところに着いた。そこはハイエースが頭を突っ込むように親谷の支谷に無残な姿を晒す。
 橋が落ちているので板を履いたままでは渡れない。幅1mもない狭い雪の盛り上がったルートを選んで先へ行くと林道との段差があって板を放り上げてキックステップで這い上がった。そしてまたシール登行を進めた。下山の際もまた同じことをやるのかと思うと明るいうちに通過せねばと思った。林道の雪の状態は上流ではすべてつながるので歩くことに専念できた。
 開豁な谷合に着いた。林道の積雪量も一段と増えた。大きな堰堤が視野を遮る。4本の谷を集める堰堤だ。その内の西からの1本は五蛇池山から落ちる。W君とF君はここを遡行している。南西からの谷は黒津山から落ちる。地形図を眺めていて北西に広がる等高線の緩い谷にスキーを走らせたい、と念願してから何年になるだろう。
 堰堤を登りきった辺りで小休止した。すでに9時になっていた。どこから取り付こうか、と思案しながらスキーを進めると南西からの意外なほど狭い谷を避けるようにして林道のヘアピンカーブが始まった。ある程度登ったところから林道が絡みつくような尾根を直接登りはじめた。地形図では想像しにくいかなりの急な傾斜であった。
           ぶなの疎林へ
 浅い谷から離れて尾根に逃げると少しは楽になった。息を切らせてジグザグを繰り返していくうちに一旦は谷にルートをとっていた林道が再び尾根に上がったところに着いた。そこはぶなぶなぶなの疎林だった。滑降を想像するだに楽しそうな疎林である。来た甲斐があるぞ、とW君に奇声を発してみた。きっと彼も発狂寸前だろう。今まで美濃でろくろく滑った経験はなく藪をくぐることが多かったからだ。姥が初めて,と言った位だ。
 ぶなの疎林はずっと続いた。866m峰との鞍部を回って林道と平行するような北東尾根にも続いた。地形図に現れない10m以下のコブから杉の木立を抜けていく。但しここは急斜面であり、北西の季節風がもたらした雪で庇が出来ている。寒気も非常に強い。ここを小刻みなジグザグで切り抜けると970mの小平地に着く。12時過ぎとなった。
           風雪の尾根  
 今までは今日は外れたかな、と思うような安定した空模様だった。ここから続く斜面は尾根というよりはラウンド壁のような山腹に見えた。それを確認した途端横なぐりの風雪模様と激変した。ああ、冬山に来ているな、と実感する。里は早春、ここはまだ冬であった。
 標高差にして後223mある。道があれば40分程度の射程距離であるが私たちはすでに6時間も行動していた。山頂に立てば立てるが帰りはどうなるか。二人で協議した。これまでに下山で舐めた苦労を思うと引き返すしかない。
 登頂を断念した。12時20分、シールを剥がして滑降した。ぶなの疎林は美味しい。一段と上手くなった気がするパウダーの世界だ。美味しいところは早く過ぎる。そしてしばらくは盲目的に枝沢の源流部を滑降した。降るにつれて沢は細くなる。誤算である。どうやら滑降ルートの選定を間違えたようだ。途中で尾根に逃げて植林、自然林とも密な林は板を外して林道に降りれた。むしろ黒津からの本流を滑降すべきだった。それでも約1時間で降れた。
 林道に降り立った後は単調で忍耐のいる滑走が待っていた。滑らないところはストックで押して、また数々のバリアを越えた。残雪が切れ切れになると板を外した。毎度馬鹿馬鹿しいことだが・・・。林道の際には若々しい萌黄色のフキノトウが見えた。
 親谷出合に着いたのは17時ジャスト。谷間なのですぐに暗くなる時間だ。この判断で良かったのだ。道の駅で温泉に浸った。冷えた体に染みとおる。