朝日文庫『西東三鬼』集の「神戸」「続神戸」を読む2011年12月03日

 11/19から11/20はおいの結婚式で神戸市に、11/26から11/27は業界団体のバス旅行でまた神戸市に行った。行ったついでに孫文記念館を訪ねた。山口誓子の記念館も行ってみたかったが時間がない。
 神戸市の異人館のある坂道を登りながら、もう一人大事な俳人がいたような気がしていた。永田耕衣ではない。何日かして西東三鬼と思い出した。実はおいの嫁さんが津山市であり、西東三鬼の出身地とは知っていた。神戸とのつながりが思い出せなかったのだ。

 今日、終日自宅にこもって読書三昧。外は鉛色の曇り空で出る気もしない。書棚から表題の本を取り出して枕元に積んで置いた。この句集の半分が俳句で半分が「神戸」と「続神戸」になる。異色の俳人である。
 「神戸」を読み出すと面白い。面白いといっては的が外れるか。流麗な流れるような文体を読み進めていうちに、ああ!これは名文だ、と思った。陋巷に住むインテリ俳人の自伝的物語。
 人間の生きる悲しみを諧謔で包む。ペーソス。それなのに抱腹絶倒する場面もある。可笑しいのに悲しい文の味わい。自らを阿呆と自虐的に語る。
 行き届いた人間観察、細かな風景描写。コスモポリタン的な人間形成が戦前戦中の神戸の町に溶け込んで生きながらえる。歯科医であり、外国語も堪能?行動力もあるのに時代に翻弄されて、流転の人生を受け入れざるを得なかったのだろうか。
 それゆえ俳句もホトトギスの句風とはひと味も二味も違う。

おそるべき君等の乳房夏来る

水枕ガバリと寒い海がある

中年や独語おどろく冬の坂

 最後の方に面白い文があった。「天狼」に寄稿された流々転々に
死が近し端より端へ枯野汽車     三鬼
死が近し枯野を渡る一列車      秋元不二男
 が偶然似通うことを笑い会う話である。
もう一人山口誓子にも
死が近し星をくぐりて星流る  
 がある。誓子も孤独な人だったが三鬼も死を見つめていたのだった。

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