The brave respect the brave.2021年11月23日

 ネット番組で知った言葉。
検索すると、ビアスの詩が由来のようだ。それを安倍首相が訪米して演説に引用された。今朝の番組は江崎道雄氏の言葉にあった。

ブログ「種まく人から人々へと・ 命の器(いのちのうつわ)」
https://blog.goo.ne.jp/tanemakuhito1921/e/33b22cb2e59b3e1c3399c6479966d145

安部首相のパールハーバーの演説での引用"The brave respect the brave.「勇者は、勇者を敬う(勇者は、死者も敬う)」アンブローズ・ビアスの、詩は言います。"

前後の文脈と英語詩や聖書などとの関連やイメージも考えてみましょう。

・・・前略
昨日、私は、カネオヘの海兵隊基地に、一人の日本帝国海軍士官の碑(いしずえ)を訪れました。

その人物とは、真珠湾攻撃中に被弾し、母艦に帰るのをあきらめ、引き返し、戦死した、戦闘機パイロット、飯田房太中佐です。

彼の墜落地点に碑を建てたのは、日本人ではありません。攻撃を受けた側にいた、米軍の人々です。死者の、勇気を称え、石碑を建ててくれた。

碑には、祖国のため命を捧げた軍人への敬意を込め、「日本帝国海軍大尉(だいい)」と、当時の階級を刻んであります。

The brave respect the brave.

「勇者は、勇者を敬う 」

アンブローズ・ビアスの、詩は言います。

戦い合った敵であっても、敬意を表する。憎しみ合った敵であっても、理解しようとする。

そこにあるのは、アメリカ国民の、寛容の心です。

戦争が終わり、日本が、見渡す限りの焼け野原、貧しさのどん底の中で苦しんでいた時、食べるもの、着るものを惜しみなく送ってくれたのは、米国であり、アメリカ国民でありました。・・・後略

古代ギリシャに遡り、ビアス同じく従軍歴のある歴史家
トゥキュディデスは『戦史(ペロポネソス戦史)は次のように述べている。

Make them your examples, and, esteeming courage to be freedom and freedom to be happiness, do not weigh too nicely the perils of war.

「われわれの論旨をもってすれば、古事を歌った詩人らの修飾と誇張にみちた言葉にたいした信憑性をみとめることはできない。また伝承作者のように、あまりに古きにさかのぼるために論証もできない事件や、おうおうにして信ずべきよすがもない、たんなる神話的主題をつづった、真実探究というよりも聴衆の興味本位の作文に甘んじることも許されない。しかしそのいずれをも排し、もっとも明白な事実のみを手掛りとして、おぼろな古事とはいえ充分史実に近い輪郭を究明した結果は、当然みとめられてよい。」 ・・・

中略

・・・「おうおうにして人間は、自分がその渦中にあっていま戦いつつある戦争こそ前代未聞の大事件であると誤信する。そして戦争が終わり、直接の印象が遠のくと、古い事績にたいする驚嘆をふたたびあらたにするものである。しかし印象ではなく結果的な事実のみを考察する人々には、今次大戦の規模がまさに史上に前例のない大きいものであったことがおのずと判明するだろう。」

ペロポネソス戦争には、トゥキュディデス自身も参加している。演説では、『戦没者葬送演説』に際し、ペリクレスによる演説が最も名高い。

われらの政体は他国の制度を追従するものではない。ひとの理想を追うのではなく、ひとをしてわが範を習わしめるものである。その名は、少数者の独占を排し多数者の公平を守ることを旨として、民主政治と呼ばれる。わが国においては、個人間に紛争が生ずれば、法律の定めによってすべての人に平等な発言が認められる。だが一個人が才能の秀でていることが世にわかれば、無差別なる平等の理を排し世人の認めるその人の能力に応じて、公けの高い地位を授けられる。またたとえ貧窮に身を起そうとも、ポリスに益をなす力をもつ人ならば、貧しさゆえに道をとざされることはない。われらはあくまでも自由に公けにつくす道をもち、また日々互いに猜疑の眼を恐れることなく自由な生活を享受している。よし隣人が己れの楽しみを求めても、これを怒ったり、あるいは実害なしとはいえ不快を催すような冷視を浴せることはない。私の生活においてわれらは互いに制肘を加えることはしない、だが事公けに関するときは、法を犯す振舞いを深く恥じおそれる。時の政治をあずかる者に従い、法を敬い、とくに、侵された者を救う掟と、万人に廉恥の心を呼びさます不文の掟とを、厚く尊ぶことを忘れない。

ペリクレスの戦没者葬送演説https://kotobank.jp/word/%E3%83%9A%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%88%A6%E6%B2%A1%E8%80%85%E8%91%AC%E9%80%81%E6%BC%94%E8%AA%AC(%E6%8A%84)-1614572

For the whole earth is the tomb of famous men; not only are they commemorated by columns and inscriptions in their own country, but in foreign lands there dwells also an unwritten memorial of them, graven not on stone but in the hearts of men. Make them your examples, and, esteeming courage to be freedom and freedom to be happiness, do not weigh too nicely the perils of war."

[Funeral Oration of Pericles]

Thucydides, History of the Peloponnesian War

I love the man that can smile in trouble, that can gather strength from distress, and grow brave by reflection. 「私は困難の中で微笑むことのできる人を愛する。その人は、悲しみから力を集めることができ、非難によって、さらに勇気が増すのだ。」(トーマス・ペイン)
'Tis the business of little minds to shrink, but he whose heart is firm, and whose conscience approves his conduct, will pursue his principles unto death.

高橋哲哉氏の著書で、ギリシア(アテナイ)のペロポネソス戦争後のペリクレスによる戦死者葬送演説を引きながら、「国家が「国のために」死んだ戦死者を「追悼」しようとするとき、その国家が軍事力をもち、戦争や武力行使の可能性を予想する国家である限り、そこにはつねに「尊い犠牲」、「感謝と敬意」のレトリックが作動し、「追悼」は「顕彰」になっていかざるをえないのである」と述べている。これを踏まえて、安部首相の演説の一部を読み返すとどう感じるだろうか?

彼の墜落地点に碑を建てたのは、日本人ではありません。攻撃を受けた側にいた、米軍の人々です。死者の、勇気を称え、石碑を建ててくれた。

碑には、祖国のため命を捧げた軍人への敬意を込め、「日本帝国海軍大尉(だいい)」と、当時の階級を刻んであります。

The brave respect the brave.

「勇者は、勇者を敬う 」

アンブローズ・ビアスの、詩は言います。

戦い合った敵であっても、敬意を表する。憎しみ合った敵であっても、理解しようとする。

そこにあるのは、アメリカ国民の、寛容の心です。

戦争が終わり、日本が、見渡す限りの焼け野原、貧しさのどん底の中で苦しんでいた時、食べるもの、着るものを惜しみなく送ってくれたのは、米国であり、アメリカ国民でありました。・・・
以上
ビアス,アンブローズ
1842‐1913。アメリカ草創期のジャーナリズムで辛辣な筆を揮った。
風刺と機知に富む社会批評で、アメリカ草創期のジャーナリズムで辛辣な筆を揮ったビアス(一八四二‐一九一三)の箴言警句集。芥川龍之介の『侏儒の言葉』にも大きな影響を与えた。名訳の誉れ高い旧訳にさらに手を入れ多くの新項目を加えた決定版。
悪魔の辞典(新編) (岩波文庫)

・・・勝者であり、偽善に満ちたアメリカならではの発想か。君はわれわれアメリカを恐れずよく戦った。と誉めることで罪の意識を償う。
 もしアメリカが敗戦国だったら恨みの言葉になるだろう。そう、リメンバーパールハーバーである。緒戦を徹底的に叩かれた恨みがあった。それを以って対日戦に参戦して行く。自らちょっかいを出したくせに。

 歴史の古い中国はどうか。
ある人が孔子(こうし)に尋ねた。「恩徳を施して恨みのあるものに報いてやるというやり方はどうでしょうか。」孔子が言われた。「では恩徳を施してくれたものには、どうやって報いればよいのか。恨みのあるものには正しさで報い、恩徳を施してくれたものには、恩徳をもって報いるのがよいのだ。」

では老子のほうから引用した人がいなかったのは何故か、やっぱり中国的な生き方ではないからなのか?よくわからないですね。

老子から(引用元は同じ)
>無為(むい)(=人為的な細工をしないこと)を自分の生き方とし、無事(ぶじ)(=何事もしないこと)を自分の営みとし、無味(むみ)(=好悪をもたぬこと)を自分の感情とする。小さなものには大きなものを与え、少ないものには多くして返してやる。恨みのあるものには、徳をもって報いてやる。
以上
・・・・勝者は敗者からの意趣返しが怖い。戦後の日本に大量の食糧を支給した。脱脂粉乳はまずかったが飢えを経験せずに済んだ。余り物を恩着せがましくくれたわけだ。憲法9条制定と引き換えに。アメリカ人の贖罪をつぐなう意味もあった。