秋風の吹きくる方へ帰るなり 前田普羅2019年11月03日

 昭和23年『定本普羅句集』から。小恙数日の後9月24日、大和関屋を発つ。」とある。(中西舗土『鑑賞 前田普羅』)
 奈良県の弟子宅から富山県に帰る。帰宅したって娘は嫁いでいない。妻は昭和18年1月23日に死去。天涯孤独の身になっていた。そんな家族環境を知るとこの句の寂蓼感がいや増すではないか。普羅の句には寂しいものが多いのは孤独な人生であったことと性格にも寄るのだろう。

 昭和23年4月にはいなべ市鼎の龍雲禅寺に逗留し、長屋佳山と交流し、漢籍を読んだりしている。その後に奈良県に向かったようだ。現在も長屋門に俳句の札がかかり庭には句碑が二基建っている。親交の度が分かる。
http://www.inabe-gci.jp/nature/2018/04/post-8.html
 いなべ市でも農業施設「フラール」のフラは普羅に因むとか。鼎の手前には大きな案内板もあり、地味だが顕彰されている。
http://koyaban.asablo.jp/blog/2012/11/25/6642904