『兜太』(Tota)を読む2019年01月05日

 昨年暮に購入。平積みで異様な表紙に引かれてしまった。1977年の講談社現代新書『小林一茶』を読んでからが兜太との出会いである。以後,目につくかぎりは読んで来た。それで俳句はと読むとユニークな形だった。最初はなじめなかったが少しは分かるようになった。しかし、自分で同じような発想で作句はできない。技術的な解説書もあるが、発想の飛躍があり、天才的なところが学んでも追随はできない。それがまた存在感を示す元である。兜太の俳句は碧梧桐、山頭火、放哉に並ぶ一代限りの詩形である。
 本書には多数の兜太論が凝縮している。本人を交えた座談会もある。当初は兜太の存命を前提にした季刊だった。本人の死去、「海程」の終わりで以下のように主旨が変わった。

〈編集主幹〉黒田杏子 〈編集長〉筑紫磐井 〈名誉顧問〉金子兜太
〈編集委員〉井口時男/伊東乾/坂本宮尾/中嶋鬼谷/橋本榮治/横澤放川/藤原良雄
A5並製 200ページ
ISBN-13: 9784865781908
刊行日: 2018/09
定価: 1,296円
現役大往生した、俳人金子兜太。その思想を探る“生きる勇気が湧く”雑誌、創刊!
去る2月20日、98歳で急逝した俳句界の巨星、金子兜太(1919-2018)。
社会性俳句に始まり、造型俳句、前衛俳句、定住漂泊、荒凡夫、ふたりごころ、いきもの諷詠、アニミズムと境を深め、戦後俳句界の重要な現場に常に立ち会ってきた金子兜太氏。その精神と肉体の融合が結晶する「存在者」の思想を継承し、俳句界を超えて広く文芸・文化・思想関係の方々の参加による「総合誌」を創刊する。
【年2回刊予定】
〈編集主幹〉黒田杏子
〈編集長〉筑紫磐井
〈編集委員〉井口時男/伊東乾/坂本宮尾/中嶋鬼谷/橋本榮治/横澤放川/藤原良雄
〈編集顧問〉ドナルド・キーン/瀬戸内寂聴/芳賀徹/藤原作弥
〈名誉顧問〉金子兜太
以上は藤原書店のHPからコピペ。

 藤原書店といえば岡田英弘著作集を1から6までは買った。手堅い出版社だが、俳句まで出すとは。おそらく藤原社長が兜太ファンなのだろう。スポンサーというか、道楽半分である。

小屋番の山日記から
「金子兜太を考える 」
http://koyaban.asablo.jp/blog/2018/05/06/8846273
「俳句と歴史の見方 」
http://koyaban.asablo.jp/blog/2018/05/10/

「座談会」にもあるが、虚子を評価していなかった。学ぶことは何もないそうだ。秋桜子門ー加藤楸邨ー金子兜太の師系を考えるとアンチ虚子は無理もない。
 中日新聞・東京新聞の「平和の俳句」は読者大衆の支持を得たという。3年で10万句の句が集まったのも兜太の影響だった。兜太亡き後も継続できるか。結局はメディアによって増幅された巨人だったか。自らは虚人という。とにかく面白い冊子である。生インタビューは特に面白い。