鑑賞 浅野梨郷の歌⑩2015年07月10日

『梨郷歌集』昭和4、5年の巻(昭和6年7月1日発行、私家版)は梨郷初の歌集だった。装丁は和綴じ、特製原稿用紙を袋とじという古風な体裁。原稿用紙1枚に6首を掲載。昭和4年196首、昭和5年295首を収録。


 ちとせに、と題して5首あるうちの2首目

さびしさをわがものとしてひとすじにいくるいのいちはつよくこそあれ


 ちとせに、と題して

さびしさはかたときならず相わかれともに生きむと相つとめつゝ(ひとつのともし火)

*単身赴任で留守を守る妻(ちとせ)を激励している。そう思ったが、実は自分の孤独感を癒すために詠んでいる風にも思う。昼間は奈良や周辺の古刹を巡って詠んで、慰められているが、夜の独り身の辛さが身にしみるのである。妻への愛が名古屋へ帰るエネルギーとして蓄えられて行く。