鑑賞 浅野梨郷の歌⑧2015年07月08日

揖斐川左岸からの伊吹山
『梨郷歌集』昭和4、5年の巻(昭和6年7月1日発行、私家版)は梨郷初の歌集だった。装丁は和綴じ、特製原稿用紙を袋とじという古風な体裁。原稿用紙1枚に6首を掲載。昭和4年196首、昭和5年295首を収録。

伊吹山雪のましろにいただきの日にてる見へて霧に浮きいづ

*晴れた日は濃尾平野の西に屏風のごとく存在感を見せる伊吹山。名古屋からは木曽川、長良川、揖斐川からあがる水蒸気でガスに包まれていることが多い。それでも積雪期であれば、霧に隠されていても、日光が照れば反射光により霧に浮かんで見えるというのである。
 森澄雄の俳句「雪嶺のひとたび暮れて顕はるる」もこんなイメージではないか。