「山女原」(あけびはら)考2013年12月10日

難読地名考
山女原  
 仲間内がどう読むのか、と聞くので、「あけびはら」と言った。しかし、そのわけは知らなかったのでこの際検索でググって見た。

 どうしても”やまめはら”としか読めないが、”あけびはら”という。あけびならば、WIKIPEDHIAによると
「アケビ(木通、通草)は、アケビ科の蔓性落葉低木の一種(学名: Akebia quinata)、あるいはアケビ属(学名: Akebia)に属する植物の総称である。」と、立派な漢字が当てられているが、これも知らないと読めない。

ある人のブログには
「山形では、秋のお彼岸には、先祖の御霊が<アケビの舟>に乗ってこの世に戻って来るという言い伝えがあり、その頃になると山からアケビを採ってきて、仏壇にお供えする風習があるそうです。また、東北地方では、アケビを<山女>とか<山姫>とも呼びます。」
 うんうん、山形では山女でもあけびと読むのだそうだ。

検索を続けるうちに牧野富太郎先生の記事に出会った。全文はクリックして読むとして、一部を転載すると

「その口を開けたのに向かってじいっとこれを見つめていると、にいっとせねばならぬ感じが起こってくる。その形がいかにもウーメンのあれに似ている。その形の相似でだれもすぐそう感ずるものと見え、とっくの昔にこのものを山女とも山姫ともいったのだ。なお古くはこれを、※[#「くさかんむり/開」、85-15]と称した。すなわちその字を組立った開は女のあれを指したもので、今日でも国によるとあれをおかい又はおかいすと呼んでいる。これはたぶん古くからの言葉であろう。そしてこの植物は草である(じつは草ではなく蔓になっている灌木の藤本だけれど)というので開の上へ草冠を添えたものである。こんなあだ姿をしたこの実から始めてあけびの名称が生まれたのだが、このあけびはすなわちあけつびの縮まったもので、つびとは、ほどと同じく女のあれの一名である。」

 山姫とか山女と読んだのは女性器に見立てたからだったのだ。ちょっと、下品な発想をすると、山女というは余りもダイレクトなので漢字では地名にしか残らないのだろうか。

「あけびの実はなかなかに風情のあるものであるから、俳人も歌よみもみなこれを見逃さなかった。昔の連歌に山女(あけび)を見て「けふ見れば山の女ぞあそびける野のおきなをぞやらむとおもふに」と詠んでいる。」

 この戯れ歌?も、女が(股を開いて)遊んでいる。それを見た野のおきながやりたい、というのである。野のおきなとは野老(ところ、山芋の一種)のことで、芭蕉の句に
  山寺の悲しさ告げよ野老掘り
がある。アケビとヤマイモの取り合わせとは楽しい歌だこと。

「これは自分の拙吟だが「なるほどと眺め入ったるあけび哉」、「女客あけびの前で横を向き」これはどうだと友達に見せたら、そりゃー川柳へ入れたらよかろうと笑われた。」とまあ、牧野翁も自作を楽しんでいるのは笑わせる。
 
 全文は以下で
http://www.aozora.gr.jp/cards/001266/files/47237_29243.html

 もう一つ思い出した。映画「雪国」の冒頭の場面に、池部良がアケビの一房を持って山を下るところがあった。それを岸惠子がもらって食べるところもあった。あの川端先生のことであるから、ただの描写とは思えなくなった。越後の山奥の女、即ち山女である。
 「雪国」は決して清純な映画ではなく、色恋の強い文学であった。「女を世話してくれ」などというセリフがあるのを見ても性への傾斜が強かった川端康成の暗示かも知れないと思った。練達の文章が文学たらしめている。

 いやはや、地名をまじめに探る目的で調べたら、週刊ポストとか週刊現代のお色気記事になりそうな話で落ちがついた。

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