晩秋の奥美濃・西台山を歩く2013年11月02日

西台山のシロモジの黄葉
 携帯にWから連絡が入った。山岳会のKさんが西台山で道に迷い、日没で捉まってビバーク中、とあった。Wは夜の内に、すぐに行動し登山口ののりこし峠に向かったらしい。
 Kさんのことだからと、私は待機するつもりだったが、高齢の身を案じて、白湯をテルモスに詰めて、あるだけの食料などをザックに入れ、未明に出かけた。
 高速道路上で夜明け。今時は午前6時だ。以前に行ったきりだし、のりこし峠は不思議に下りばかりで登ったことがなく横蔵寺周辺でうろうろしてしまった。早朝になってやっと起き出した住民に道を聞いて無事峠に着いたのが午前8時。2台の車がある。
 すぐに出発する。落葉樹の林の踏み跡ははっきりしている。ところが美濃特有の微地形に惑わされて、赤テープに依存しないとRFが難しい山だと思った。石灰岩の山は固い岩石で構成され、侵食を受けにくいせいか、緩やかな地形の山が多い。鈴鹿ならば、入道ヶ岳、藤原岳、御池岳、霊仙山、伊吹山など。山上が平坦な山はそこに至る道が急である。尾根も平坦だし、やせ尾根はない。
 Wの大き目の赤布が新たにぶら下がるのが頼もしい。そんな印があっても今時はちょっとヤバイ感じのルートである。時々、後を振り返って置く。約25分も歩くと、風に乗って人の話し声が聞こえる。しばらくすると幻覚だったように静寂にかえる。また聞こえる。ああ、見つかったんだな、と確信した。3分後、やあやあ、と合流できた。山頂直下の急な登りの途中だった。
 話では西台山とタンポの間だったらしい。少し話をして折角なので山頂を踏みに行った。雑木林の道から、イヌガヤの絡まる岩混じりの道になり、急登を終わると広大な山上の一角に着いた。標高は950mだが、高度計は850mを指示。高気圧の範囲だろうか。平頂はシロモジの疎林だから何処にでも歩けるから恐い山である。慎重に赤テープを拾いながら行くと山頂板のぶら下がる山頂だった。約50分のお散歩程度だから1等三角点のあるタンポに足を伸ばしたい気も分かる。石に腰掛け、白湯を飲んだ。
 Kさん、さぞや惨めな思いでビバークしただろう。風の無い所へ移動し、眠らず、体を擦りながらじりじりと過ごした、と語った。何も食わずに眠ると体温が低下し、眠っているうちに低体温症で死ぬ。定例会ではそんな話もしてあるし、高齢者から順番に死んでゆきますよ、と脅かしてあったのが幸いした。
 無難に終わったから顛末を聞くだけでいいが、慌てて歩き回って、沢を下ったり、転倒したりすると転落事故につながってゆく。そこは心得たもので、携帯が通じたことを幸いに、救援を待つことに判断した。
 下山に取り掛かる。イヌガヤの下りでは赤テープをチエックしながら下った積もりでも道を外れていた。薮っぽくなり、おやっと、思って3m横をみると赤テープが見える。薮をのけながら行くと踏み跡に戻れた。下る途中で左右に曲がるところが曲者らしい。しっかり付いているはずのところでさえこんな有様だ。よく見てないと外す山なのだ。その後もWが残していった大き目の赤布がないと外しやすいところがあった。
 最後のコブを登り返すとすぐのりこし峠に下れた。30分くらい。Kさんは反省しきりだった。晩秋から初冬にかけてこれからこんな道迷いがよくある。日没が早いし、低山では落葉も遅く、見通しが悪い。今年は全国的に黄葉も紅葉も発色が良くないという。それでもまあ、黄葉の山に登れた。

ビバークの身に入む夜の山の中

ビバークの夜の長さを耐へ忍ぶ

黄葉山赤と緑も混じりけり

シロモジの黄葉や山は平なり

秋の朝山のふもとの喫茶店

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