続続続・Nさんは御池岳~藤原岳の何処に?2012年03月11日

 これで5回目の捜索行となった。3/3(土)でもう3月下旬まで無理かな、と思って個人的には一時休戦を決め込んだ。だが、ヤブコギネットの書き込みを読んだりすると熱心に活動されているのが分かる。天白区の隣の緑区の人でもあり、いつも気になる。
 関係者に聞くと今は8時ごろ、と聞いたので3/10(土)7時出発にした。しかしこれは失敗だった。高速がスイスイ流れていかない。7時ではもう遅いのだ。案の定、センターに着いたのは8時をまわって隊編成も終わり、出発直前だった。
 Iリーダーにあいさつし、とりあえず、名簿に記帳すると、20名以上の記名があってモチベーションの衰えないことに感動する。Iさんがみなさんが普段から遊んでいる山なので不明者をそのままにしておけないんでしょう、という。その通りでしょう。
 コメントの「のぼりん」さんが小屋番さんですか、と声を掛けてこられた。聞くと、鞍掛峠の近江側の谷を捜索するというので同行を申し出た。気になっている御池谷左又は別の隊が入ることになっているようだ。
 メンバーは四日市西署員とのぼりんさんと3名。トンネルを抜けると滋賀県側に出た。残雪も多くて、まだ2週間くらい前の状況である。Pで支度していると雷鳴が響いた。頑張れよ、と手詰まり感を払拭するような号砲に聞こえた。
 みなさん長靴というのでこちらもスパイク付きの長靴にした。峠への道をしばらく登って平らなところから峠直下の谷に下る。が、急俊で下れない。もう一段上に上って下り直した。ロープを出す、というので助かった。ホントはあそこで欲しかったね、と笑った。
 谷は平凡な相である。浅いので長靴のままで溯る。二俣の出合いでは右が雪が詰まっているので左に振った。再び二俣だがそこで別れて捜索する。どちらも水の絶えるまで溯ったがどうも最初の二俣で左に振ってしまったのはミスだった。焼尾山への尾根の中間にある鉄塔付近へ出てしまった。一面霧氷である。
 峠まで下って更にPへの道を下って、谷と交差する地点からロープ懸垂2回で右又出合まで下った。そこから枝谷を溯ってみたらこれこそ峠の真下に出た。何ら手がかりはなかった。
 ロープの準備中、風雪がしばらく続いた。その後、空にはトンビが飛びまわるが、もう一羽、烏がせわしなく飛び回った。不吉な鳥である。ひょっとして死臭を嗅ぎつけて場所を特定しているんではないか、と話し合った。死肉を漁ることもあると聞く。
 烏が上空で騒いでいたら要注意である。
 目的地の捜索は2時ころには終わってしまった。無線で連絡を取り合って鈴北に向かった。途中の鉄塔周辺も見た。滋賀県側の植林の地帯へ道があるので入ってみた。倒木で通せんぼされている。ちょっと下って、別の尾根を登り返した。そして谷を覗いてみたが滝がかかっている。地形図で想像する以上の険しさがある。
 登りきると登山道に出た。すると上から降りてくる捜索隊と合流したので少し遅れて下った。先に下った人らもまだ休んでいる。この中には洞井孝雄氏もいて、最近上梓された『安心登山の技法』(東京新聞2012.2.25刊)を「買いましたよ」とあいさつ。基本的に登山はゆっくり覚えたいものである。登山は人間的なものだから最初は師匠について覚えて欲しいものである。
 行方不明となっているNさんは山歴3年で単独+雪山幕営に突き進んでいて、性急の感なきにしもあらず。都会生まれの都会育ち?でコンピューター技師のNさんらしく、人間を介さず、ネット情報と装備だけで山にのめりこんでしまったか?プログラムにバグがあれば社会的に大混乱するが生命には関係ない。慎重な性格と聞いたがちょっとしたことを補ってもらう先輩、同行がひとりは欲しい。究めて人間的(間違いを犯しやすい意味で)な行為なのだから。同行がおれば九死に一生を得た、ということで済んでいただろうに。
 のぼりんさんは峠に着くたびに喫煙する。山で吸う煙草はとくにうまいと聞く。中々のヘビースモーカーのようである。これだけ値上がりしてもまだ吸い続ける。筋金入りなんだろう。
 峠からはPに向かって下る。杉の植林の中の暗い道である。三重県側よりは緩くて歩き易い。Pに着くと車が2台増えていた。無線のあった捜索隊だ。帰り仕度してセンターへ戻る。2月中はもう薄暗くなったが今はまだ明るい。
 JAC東海支部の学生連盟の諸君8名はかなり遅れて下山してきた。T君に聞くと御池岳頂上でホワイトアウトで迷ったらしい。要するにそういう油断のならない山であると、学生にはいい勉強になったという。やれやれである。
 中でまた地形図に捜索範囲を落とし込む作業が始まる。Iリーダーの代わりにノリヤ(本職が海苔の製造らしい)さんが中心となっている。各自の想定談義が交わされる。もうありませんか、みなさんが気になっているところはありませんか、と呼びかける。
 その間にNさんの家族から熱いお茶やお菓子が差し入れられてねぎらわれる。長引く捜索活動にご家族の方たちも心労がたまる一方だろう。お察し申しあげる。
 これまで推定延べ300名くらいが捜索された。雪で危険なシーズンは去ろうとしている。無作為に歩く範囲は限られてくる。しかし、ハイカーなどの目は増える。
 1日も早く見つかることを願っている。