地形図のネット活用法について2008年10月26日

 地形図一枚の値段は今いくらですか。
 戦前の寺田寅彦随筆集(岩波文庫)にはコーヒー1杯の値段と書かれていました。今はネットで検索しますと一枚270円と分かります。書店へ買いに行く交通費込みだと私の場合丸善往復で520円ですので高いものになります。
 昨日仲間にネット活用を勧めたら今はもう右クリックで保存できず、したがってプリントが出来ないとのことでした。
 しかし、方法はあります。電子国土ポータルです。以下に説明しますので活用して下さい。
 先ずトップ画面に
①Googleの検索窓を作成しておきます。
②Googleの検索窓に「地図閲覧サービス」と入力します。検索をクリックします。
③すると
地図閲覧サービス(ウォッちず)
システムの移行作業は、立体視サービスを除き終了しました。
の画面がでてきますので、何度も継続的に利用することを考えて左の「お気に入り」の追加に登録します。
④次は「ウォッちず(地図検索画面へ)」をクリック
⑤次は「索引図による検索」をクリック

⑥次は具体的な検索作業に入るために20万図の地勢図に名前をクリックします。例えばオサンババに登るとします。その地勢図は「飯田」なので飯田をクリック。次は飯田の中の5万図と更に細分化された2.5万図の図名が出ます。2.5万図は更に4分の1に細分化されていますので
5万図 萩原を選択→2.5万図  飛騨大原を選択し左下にマウスのポインターを当てると手のマークが出てクリック

⑦するとめいほうスキー場辺りの2.5万図が現れます。これでは大きいので右上のマイナス記号をクリック
1センチ500mの縮尺に縮まり、より全体が分かります。ポインターをクリックしたまま欲しい画面までずらします。オサンババは烏帽子岳1625mの北ですから下へずらします。すると1631mの三角点に山中山と*肩聳体の印刷がされています。ここが今の山名です。オサンババは俗称です。山中峠を含めた全体を中心までマウスでクリックしてずらします。

*肩聳体(けんしょうたい)とは地形図の山名と川名に使われる字体で右に傾いています。地名や峠名は直立していますので注意して下さい。かつて稲武町に押山という地名がありましたがあつた労山が地名と山名を混同して山名として扱っていました。最新の豊田市合併後は押山町になり地名が変わり、三角点の隣に印刷されていた押山は消えました。地名はよく変わりますが山名が変わることは滅多にありません。

⑧これまではこの状態で右クリックしてピクチャに保存して印刷が可能でした。今は出来ません。上にある「電子国土Webシステムでこの地図を見る 」をクリック

⑨すると500mの縮尺のままの地形図が現れます。これでも印刷は出来ますが右クリックすると800mの縮尺に変わります。更に右クリックすると1kmになりますが等高線が消えますので800mのままでプリントをクリック。印刷されます。烏帽子岳も欲しい場合は枠の上の緑の△印を操作して下向きの▼をクリックして移動します。再びプリントすればいい訳です。全く別の地域の印刷は④に戻ります。

次はマニア向けですが三角点の点名を調べるネット活用方法です。
上の②までは同じです。
②の窓に国土地理院と入力。トップ画面の左下の基準点測地観測データをクリック
③基準点成果閲覧をクリック
④基準点検索窓口をクリック
⑤同意するをクリック
⑥すると日本地図が現れますので例として「豊橋」をクリックし、次は根羽をクリック

⑦5万図根羽の画面がでますので押山にマウスポインターを当てます。すると点名は押山で標高も出てきました。どうもあつた労山は「点の記」を見て山名としたようです。立野は細野でした。先ほどのオサンババを見てみます。左上のメインメニューの日本地図をクリックすると検索画面へ。

⑧飯田→飛騨萩原とクリック。すると5万図の画面に◎や○に一回り小さい○もでます。凡例は右にあります。○にマウスポインターを当てますと⇒に変わり、点名などが出ます。我々が到達したのは1583mの4等三角点の山中峠と分かりました。何と山中峠から登ったのに山中峠の三角点に着いたのでした。登っても山中峠とは可笑しいですね。笑い
肝心のオサンババは寺河戸という点名でした。烏帽子岳は奥住でした。傘山は六厩(むまい)でした。
 点名を知ると色々なことが分かります。愛知の名山・鳳来寺山は瑠璃山です。これの方がいいですね。

 野口悠紀男の近刊『超「超」整理法』(講談社)のサブタイトル「分類するな。検索せよ」は現実になった。地図は買うものから検索して眺めてプリントする時代になったのだ。但し、検索語を知らないと敷居は高い。広範で豊富な知識が検索力を高める。
 地形図の整理は登山入門の中に大抵書かれているがもう不要になりそうだ。以上のネットを活用することで地形図や点の記が自分のPCで閲覧可能になっている。
 ほぼ全国の山の地形図の整理は6段のレターケースに納めているが既にパンクしてはみ出している。オンライン上にある地形図のレターケースなら物理的な悩みはない。

池内紀『ひとつとなりの山』を読む2008年10月26日

 ガンで苦しむU氏をN氏と共にお見舞いしてN氏を自宅まで送ってからしばらくご無沙汰の書店に寄った。
 新書コーナーを巡ると表題の本が目に留まった。集英社新書の新刊であった。著者はちょくちょく山岳雑誌でも見かける程度でマークしていた人ではない。本職はドイツ文学者で1940年生まれというから68歳になる。それゆえに「人気の山の傍らの、静かな山」というサブタイトルが踊る。もう盛りを過ぎた著者の最後の山の本だそうだ。
 はじめにの文で「ひとつとなりがいい。人気のある山、よく知られたひとつとなりの山。『日本百名山』などに入っていないお山。」と書き出す。そんな山を20山選定したというが目次を見ると大雪山、早池峰山、剣山、開門岳などは『日本百名山』の中に入る。と突っ込みたくなるが八海山の項は面白かった。『日本山嶽志』の高頭式の話を絡めてある点。但し、弥彦山を佐渡としているのはいかがなものか。とまたまた突っ込みたくなる。
 しかし、文の運びは無理がなく滑らかで文筆を業とするプロだけはある。定年後は是非こんな目的にとらわれない山歩きを楽しみたいものである。