映画「植村直己物語」鑑賞2007年12月08日

 日本人として初めてエベレストの山頂に立った植村直己の登山と冒険の軌跡を現地ロケと日本での生活を織り交ぜながら描いた映画であった。BGM,ロケーションは素晴らしいショットの連続で緊迫感も出ていてよかったが今一植村の人間を描ききれていない気がした。
 かつて兵庫県にある植村の墓に行ったことがある。「蘇武ヶ岳の見える墓」と題して小文をJACの会報に投稿した記憶がある。映画ではいきなり大学山岳部から始まるがやっぱり少年時代のことも描かないと人間性が出ない。登山と冒険の成功物語になる。最後は遭難するのであるが。
 また山岳遭難も北米大陸の最高峰であったから彼は世界の五大大陸の最高峰登頂のハシリであろう。これを達成して生き残っているのは(知っている人では)やはり世界で始めて女性でエベレストに立った田部井淳子(35)だけである。
 この種の登山は目標達成感と次はもうやらない、これで終り、後はゆっくり国内登山を楽しむ、妻または夫や子供と安全に登るという気があると遭難し易い。植村もマッキンレー登山を終えたら北海道で子供向けの野外学校を開校する計画があったそうだ。なぜだろうか。そんな例は心当たりが多い。
 主役の賠償千恵子扮する公子はまあまあ、しかし植村役の西田敏行はどうかなと思った。どうしても映画「釣りバカ日誌」のキャラクターが出てしまうのである。たしかにサラリーマンに向かない性格で好きなことしか打ち込めないという人物造形の設定は全く同じである。しかしコメディではないし少し腹のでた西田の体では違和感が払拭できなかった。極寒のロケ地での熱演であったことはいいとして。山岳映画は難しいですね。